産業経済委員会『松山市観光戦略プランの策定について』
更新日:2026年2月5日
調査期間
令和6・7年度
テーマ選定の経緯
観光産業は、裾野の広い産業であり、第3次産業に従事している割合が多い本市において、地域経済の活性化や税収の確保を図っていくためには、観光振興をさらに推し進め、市民全体が利益を享受できるように進めていかなければならない。
本市では総合計画や「瀬戸内・松山」構想に基づき道後温泉地域の活性化や修学旅行の誘致、さらには広域観光連携の推進など誘客施策を推し進め、令和6年の観光客推定数が600万人を越え、そのうち外国人観光客数が過去最高の 53万5,300人を記録した。
当委員会では、人口減少社会の中、インバウンド需要の拡大やデジタル化の進展など社会経済環境が大きく変化する中で、地域経済の持続的な発展や活力に満ちた地域社会を実現するため、観光振興を地方創生の有力なツールとして戦略的に推進する必要があることから、閉会中の調査研究テーマを「松山市観光戦略プランの策定について」と決定し、調査・研究を進めていくこととした。
市への主な提言事項
<うるおう松山未来観光戦略プランの策定>
1.観光行政推進に関する基盤の整備
(1)骨太方針の策定
観光振興は、地方創生の有力なツールであり、本市まちづくりの重要政策分野である。そこで、市民が共有し各種施策を戦略的かつ持続的に進めて行く必要があるため、条例及び基本計画(マスタープラン)を策定する。
(2)組織や人材の確保・育成
観光振興は短期の事業の執行のみにとどまらず中長期にわたり継続的、戦略的な事業展開が求められている。観光政策の司令塔として、専門人材を配し、権限と財源を伴う、国も推奨している観光地域づくり法人「登録DMO」を設立する、また観光人材やガイドの育成のため、観光教育を充実する。
(3)財源の確保
財政状況が逼迫化する中、観光施策推進のため、安定的で充実した自主財源の確保は喫緊の重要課題である。国の補助金や制度も最大限活用しつつ、安定性、実現性、即効性、実効性(財源規模)を考慮すると有力な選択肢として宿泊税について関係者を巻き込んでの検討に着手する。
2.観光振興コンテンツの充実
(4)魅力的な観光資源の研磨・開発
坂の上の雲フィールドミュージアム構想の基本理念にある有形無形の宝を発掘し磨き、発信し観光振興につなげるため、本市の地域特性(強み)を総点検し、かつ中予広域圏域を巻き込み観光資源をブラッシュアップする。まつり、アート、食、サイクリング、四国遍路の世界遺産化、松山城の国宝化、旧松山藩主久松家伝来歴史資料の保存活用、道後温泉の新施設(歴史ミュージアム、第4の外湯「道後斎戒沐浴の湯」)整備、ナイトタイムエコノミー、マイクロツーリズム、マジェスティック(上質、雄大で荘厳)な観光地等があげられる。
(5)実需を生み出し地域経済活性化に波及する仕組みづくり
効果的なマーケティングにより適時的確な情報発信を行うこと、また、マスツーリズム化(戦後、観光が大衆化・低廉化された)から脱却し、マネタイズ(収益化)を追求し、実需が地元業者に確実に届き、雇用確保や就業者の賃金アップにつながる仕組みづくりを支援する。ラグジュアリーマーケット(富裕者層市場)開拓、旅行需要の平準化(平日学校旅行休暇制度の創設等)、MICEの推進等があげられる。
(6)インバウンド対策と新たな海外都市交流
人口減少による国内観光市場の縮小は避けられない。そこで、好調なインバウンド需要を契機としていかに安定した海外市場を構築するかが求められている。多言語対応、Wi-Fi環境整備、2次交通整備等、訪日外国人の障壁となっている事項を解消すること、更に国際定期航路の拡充やクルーズ船の誘致、姉妹都市や友好都市とのより緊密で活発な関係構築や新たな海外都市交流に向けて、将来を見越した戦略的な取組も重要になってくる。
(7)観光危機対応
新型コロナウイルスなどの感染症、毎年のように発生し大きな被害をもたらす自然災害、加えて、風評被害やオーバーツーリズムといった観光地特有の課題についても実効的対策が求められている。業界団体にBCP(事業継続計画)の策定を進め、観光版BCPと称されるDCM(Destination Continuity Management:観光地域継続マネジメント)、その計画DCP(Plan:観光地域継続計画又は観光危機管理計画)を策定する。
(8)観光DXの推進
デジタル技術の活用により、ユーザーの利便性向上や業務の効率化を図ることはもとより、ビッグデータやGPSによるより正確な移動データを収集し分析・利活用により、既存戦略の評価や、新たな戦略の創出といった変革につなげていくことが求められている。フリーWi-Fiや5G環境の拡充、デジタルマップの整備(多言語対応)、観光型MaaS(交通やイベントの最適化予約及び決済を一体的にシステム化)の構築、観光CRMの導入(CustomerRelationship Management:顧客関係管理システム)等があげられる。
(9)移動の利便性の向上
観光と交通は密接に関係しており、空港、駅、港等の交通結節点へのアクセスや2次交通整備等、様々な移動のストレス解消に努める。その実現には、ベースとなるのが地域住民はもとより、観光客にも対応した日本初松山発となる地域交通マスタープランの策定であり、所管部局と連携し検討すること。そのほか、公共交通の利便性の向上(運賃、ダイヤ、路線網、多言語対応、フリーWi-Fi、キャッシュレス決済)、自転車環境整備(駐輪場や自転車道整備、シェアサイクル)、パークアンドライド等歩行者優先システム等があげられる。加えて、坊っちゃん列車や伊予灘ものがたり、離島航路への誘客等の観光交通の拡充やEV車両や自動運転の導入、四国新幹線更には空飛ぶクルマ等の未来交通にも挑戦する。
(10)受け入れ環境の整備促進
観光の原点はおもてなしであることから、以下4点について、観光関係者のみならず地域住民も巻き込んだ環境整備を実現すること。1.施設や通路及び情報のバリアを解消し、ユニバーサルデザインの導線を整備すること、2.気候変動対応型公共ファニチャー(日除け付きベンチや雨宿りスペース)、スマートトイレ(洋式化・美装化)、「休む・集う・学ぶ」スペースの配置等、長時間滞在を可能とする快適性・回遊性を向上すること、3.ハイブリッド表記を導入した案内板(多言語+やさしい日本語)、文化的配慮ガイドライン(宗教的背景や食文化などへの理解を促す)、窓口職員への接遇力強化研修等、多文化・多言語対応の深化と情報発信の最適化をすること、4.共感空間(観光客と住民がつながる)として、観光案内所・拠点を再構築することがあげられる。

