文教消防委員会『市民防災と議員の役割について』
更新日:2015年3月23日
調査期間
平成24年度・25年度
テーマ選定の経緯
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0、震度7を記録しました。この地震や地震により発生した津波で、死者・行方不明者が2万1千人以上を数え、39万戸を超える建物が全壊あるいは半壊し、道路をはじめとするインフラ等の都市機能が麻痺するなど、市民生活に極めて甚大な打撃を与え、国や自治体の想定をはるかに超える未曾有の大災害となったことは記憶に新しいところであります。
これを契機に全国で防災対策の重要性が再認識されることとなり、本市におきましても、近い将来南海トラフを震源とする巨大地震が起こるとされていることから、市民の防災・減災に対する意識がこれまで以上に高まってきています。
そこで、平常時の防災行政を所管する当委員会では、テーマの選定にあたって、住民の生命、身体及び財産を災害から守る責務を負う行政がこれまで以上に平常時から防災・減災対策の調査研究に努めていく必要性があると考えたことから、当委員会のテーマを「市民防災と議員の役割について」と決定し、自主防災組織について、消防団活動について、防災関係機関との連携について、議員の役割の4点について、調査研究を行いました。
市への主な提言事項
自主防災組織について
- 実災害時において、自主防災組織がどこまで防災活動を行えるかは未知数であるため、防災訓練や研修会を重ね、具体性を伴った防災活動が行えるよう、より充実した育成指導に努めること。
- 自主防災組織の活動の主体は組織の会長や防災士などの役員であるが、住民一人ひとりの危機管理意識の向上はまだ不十分だと思われるので、啓発や周知を進めていく中で、意識の向上が図られるよう、その方策を検討すること。
- 災害時には住民同士の連携が重要になることから、防災活動を通じて日頃から地域のコミュニケーションの向上をさらに図っていけるよう、その方策を検討すること。
- 本市の防災士数は全国一で女性の防災士数もふえているところであるが、今後もより一層女性の参画を進めるよう啓発を行っていくこと。
- 自主防災組織の活動・運営資金の調達に苦慮している現状があることから、資金調達手段の検討を行うこと。
消防団活動について
- 年齢構成や性別、特化するべき機能など、それぞれの地域性を把握し、団員の減少を招かないよう必要な対策を検討すること。
- 消防団員証の利用率を上げるため、応援事務所のさらなる確保を進めるなど、広く市民へ普及するような工夫を行うこと。
- 中心部等で、日中の消防団員の確保が難しい地域には、事業所消防団として活動ができる会社をふやしていけるよう検討すること。
- 既に配備されている安全装備品について、災害時に効果的に取り扱えるよう配置場所の再確認や取り扱い訓練などを行うこと。
- 災害時に一体的な活動ができるよう、日ごろから、それぞれの地域で開催される自主防災組織の訓練に積極的に参加し、有事において連携が取れるようにしておくとともに、災害時には、消防機関としての活動が優先されるため、あらかじめ平時の自主防災組織における活動の役割分担を明確にしておくこと。
防災関係機関との連携について
- 訓練の効果を高めるために、本市の地域性や災害の特性を把握・分析し、それを防災訓練に生かしていくこと。
- 災害時には危機管理担当の中に対策本部が設置されるが、消防に設置される対策本部との連携体制を構築すること。
- 活動機関が複数あるため、それぞれの情報を共有する横断的な連絡体制の構築や、各機関の技術力等の把握を行うとともに、訓練等において、地域の関係団体との連携をさらに深め、情報の共有を図ること。
- AEDを設置している事業所や医療機関等と連携することで、救急事案におけるAEDの使用回数の把握に努め、その重要性について訓練等において普及啓発していくこと。
- 若い世代に防災意識を根づかせるために、小学生を対象に行っている「命の教育」を充実させるとともに、対象を中学生まで広げることを検討すること。また、高校生や大学生など即戦力となる学生にも講習を広めていくこと。
議員の役割について
- 市の消防・防災行政について監視機能を働かせ、理事者に対し必要な対策、施策について意見を述べることで、市の消防・救急・救助体制の充実を図ること。
- 日頃から地元の災害に関する課題を把握し、必要に応じて市または関係機関に働きかけを行うこと。
- 常に防災意識を持ち、防災に関する研修会等に積極的に参加することで必要な知識を習得し、機会あるごとに市民に対して防災意識の啓発を行うこと。また、市民と行政を結び付け、市民に協働の防災意識を浸透させるための手法を検討すること。
- 災害時に重要な役割を担う地域コミュニティを強固なものにするため、議員は、防災活動等を通じて地元でのコミュニケーションの向上を図ること。
- 災害を経験した地域の取り組みを学び、災害発生後には、避難所までの誘導や避難所の運営の手伝い、情報収集といった支援活動を議員としてどこまで行えるのか、そのような災害時における議員としての役割や行動のマニュアル化を検討すること。また、定期的に参集訓練等を行うことで議員自らが迅速かつ適切な災害対応ができるよう準備すること。
- 市民に対する啓発については、議会全体で行う必要があることから、当委員会以外の議員に対しても積極的な働きかけを行うこと。
理事者からの進捗状況報告(要約)
自主防災組織について
- 自主防災組織の育成については、41地区で連合会を結成し、自主防災組織相互の連携強化や活動の活性化を図っている。自主防災組織ネットワーク会議において、地区連合会間の情報交換や問題解消に努めるとともに、分科会を設置し、その中で地域特性に応じた災害に関しての調査研究や情報の共有化を図るなど、知識と意識の向上に努めている。地区防災訓練での消防職員による指導をはじめ、防災士研修会や防災講演会、防災シンポジウムなど各種研修事業を実施することにより育成に努めている。
- 自主防災組織ネットワーク会議や分科会での情報をそれぞれの地区連合会に持ち帰り、自主防災組織が情報を共有することで、住民一人一人に危機管理意識の向上が図られるよう努めている。研修会等で自発的な防災活動の啓発を進めてきた結果、防災士などが中心となって自主防災組織自らが訓練を企画・実施するなど、組織の自立、防災意識の向上が図られている。
- 地域で行う防災訓練や研修会では、自主防災組織のみでなく、民生委員や女性防火クラブなど地域の防火・防災関係団体との交流により、災害時の連携協力体制の強化を図るとともに、日頃からの地域内でのコミュニケーションの向上に努めている。
- 災害時における女性の参画の重要性から、小中学校、幼保育園の先生に防災士資格を取得していただくなど、女性のいる職場での防災への参画を推進するとともに、防災シンポジウムなどの研修事業において、女性防災士の効果的な活動を広く市民に啓発している。平成26年1月末現在、松山市の防災士数1,929名のうち公費による資格取得者は1,104名で、その中で91名(8.2%)が女性防災士である。全国の女性防災士の割合は10.7%となっており、松山市においても全国平均を上回る女性防災士の養成及び女性の防災への参画に向け、さらなる啓発に努めていきたい。
- 自主防災組織の運営については、自主防災組織ネットワーク会議運営補助金による各種研修事業の実施や運営面での支援を行っている。地区連合会が提案する地域の災害特性に応じたハード・ソフト事業に対し、活性化モデル事業を活用することで、事業運営資金の支援を図っている。自治総合センターのコミュニティ助成事業を活用して、資機材整備の推進を図っている。
消防団活動について
- 本市消防団は、事業所消防団員及び島嶼部女性消防団員といった機能別消防団員制度の導入や、年齢構成を調査した上で定年制を設けない地域を設定するなど、地域ごとの特性に応じた団員の確保策を講じている。機動重機消防団や消防団音楽隊など、団員が持つ様々な能力を活かせるような事業を立ち上げており、今後も団員が誇りを持ち積極的に活動していただけるような環境整備に努めていく。
- 現在、応援事業所加盟店は、消防団員から紹介、要望のあった飲食店や物品販売店舗が多くを占めている。今後も防火連絡協議会の事業所や市内大手百貨店など積極的に加盟促進し、消防団員が利用できる事業所数の拡大とサービスの多様化に努めていく。
- 現在は、夜間・休日も出動することができ、居住地の分団長が了解した場合に限り、勤務地の分団へ入団することができる。事業所消防団員として入団する際は、事前に該当する分団の被雇用者率(その中でも就業時間中に出動できないもの)を調査し、その上で分団長に導入の必要性を判断していただいている。今後、必要がある場合は速やかに対応する。
- 全ての備品類は、消防職、団員が定期的に市内112箇所の全ポンプ蔵置所を回り、数量や配置場所の確認を行っている。消防団訓練計画に基づき消防職員が指導する年2回の中継送水訓練や規律訓練、方面隊ごとに実施する各種訓練研修を通じて、今後も消防団員が資器材を安全・適切に取り扱えるように努めていく。
- 平成24年度における消防団の自主防災組織への指導・訓練出向は27回117名と報告されている。自主防災組織のリーダーである防災士と調整し、訓練の打ち合わせ等でコミュニケーションを図り、有事の際にはそれぞれ役割を果たせるよう協力していく。
- 消防団員は自主防災組織の訓練において、災害発生時の対応を指導することとしている。大規模災害を想定した訓練では、消防団は消防機関として前線で災害に対応する必要があることから、自主防災組織は避難所等で、住民を保護する活動を主な役割として明確にしている。
防災関係機関との連携について
- 本市は管轄地域に、沿岸部、山間部及び内陸部を有するという地域性がある。それぞれの地域性において、沿岸部では津波・高潮災害など、山間部では土砂災害など、そして内陸部では風水害などが災害特性として挙げられる。松山市総合防災訓練等において、これらの特性を訓練想定に取り入れるとともに、過去の災害での教訓や訓練での検討課題を踏まえ、関係機関と連携した実践的な防災訓練を実施し訓練効果を高めるよう努めている。
- 災害時には、消防対策本部を設置するとともに、市災害対策本部へ消防職員を派遣することにより、相互の連携体制を強化している。衛星携帯電話やデジタル無線機の整備を行い、地上回線途絶時も通信手段を確保できるようハード面も整備を図っている。市の図上型防災訓練にあわせ、消防対策本部訓練を実施し、本部間の連携や本部運営について確認を行っている。
- 多数機関が参加する松山市総合防災訓練等を通じて、顔の見える関係を築くことにより、横断的な連絡体制の構築に努めている。定期的に関係機関が参加して、相互に技術力や保有施設の把握を行い、連携強化を図っている。訓練や研修の機会をとらえ、自主防災組織等と情報共有を図り、災害時に効果的な活動となるよう連携を深めている。
- 事業所や医療機関等との協議会等を通じて、さらなる連携体制の充実を図っている。事業所や医療機関等に設置しているAEDの使用については、救急活動報告書に基づき、その使用回数の把握に努めている。AEDの重要性については、市の広報紙・ホームページに掲載するとともに、防災訓練や救命講習など機会あるごとに消防職員、消防団員、防災士、市民救急サポーター等により、広く市民啓発に努めている。
- 平成25年度の実施状況は、市内の全小学校56校中55校で実施し、残りについても今年度中に実施する予定である。中学生への対応については、次年度からの実施を目指し、現在関係部局と実施内容や実施時間等の詳細について協議中である。高校生や大学生については、各学校で定期的に開催される消防訓練やサークル活動等を通じ、知識の向上に努めていく。