市民福祉委員会『地域包括ケアシステムの展望について』
更新日:2018年2月23日
調査期間
平成28・29年度
テーマ選定の経緯
日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しており、医療や介護が必要な高齢者や認知症高齢者は、今後も増加すると見込まれています。このような状況の中、国においては、団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)を目途に、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進しています。
地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていく必要があり、本市ならではの体制整備を進めていく必要があります。
本市においても、平成29年度から、介護予防・日常生活支援総合事業が始まるなど、新しい事業が実施されており、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを作り上げていくことが、今後ますます重要になると考えらます。
よって、当委員会として、閉会中のテーマを『地域包括ケアシステムの展望について』と決定し、調査研究を行うこととしました。
市への主な提言事項
在宅医療・介護連携の推進と相談支援体制の整備について
●在宅医療・介護連携の推進
医療・介護連携の推進に関する協定を締結した医師会、歯科医師会、薬剤師会との連携を進めるとともに、介護人材等の確保を図り、医療と介護が一体的に提供される体制の構築を推進すること。
●地域包括支援センターの充実・強化
高齢者の総合的な相談窓口である地域包括支援センターの担当地区や人材配置を見直し、さらなる充実・強化を図ること。
●生活支援の基盤整備とネットワーク化
地域の支え合い体制づくりを推進するため、協議体を早期に設置し、生活支援の担い手を育成すること。また、関係機関が連携して相談支援体制を確立し、相談から支援につながるネットワークづくりができるよう支援すること。
●市民や事業者への丁寧な周知・啓発
市民や事業者に在宅医療・介護連携の理解を深めていただけるよう、在宅医療・介護サービスに関する出前講座や説明会を開催し、丁寧に周知・啓発すること。
認知症施策の推進について
●認知症への相談・支援体制の向上
認知症への早期対応ができるように、専門医との連携強化や認知症高齢者等を支援する専門職の育成支援を図るほか、医療・介護等が連携し困難なケースにも対応できる包括的な相談体制を構築すること。
●認知症サポーターの積極的な養成
認知症への理解を深めるために、市職員全員が認知症サポーターになるよう努めるほか、市内小中学生を対象とした認知症サポーター養成講座を開催すること。また、本市独自のサポーター連絡会などの組織づくりや認知症サポーターの活動の場について研究すること。
●他市の先進事例を参考に有効な取り組みを研究する
認知症高齢者の徘徊対策として爪にQRコードを貼る「爪Qシール」といった他市の先進事例を参考に、認知症対策として有効な取り組みを研究すること。
介護予防について
●ふれあい・いきいきサロンの活動応援
ふれあい・いきいきサロン活動支援事業の評価をしっかり行い、活動団体に対し適切な支援を行うこと。また、活動を停止・休止しているサロンに対し、活動再開につながるような支援を行うこと。
●高齢者の出番と居場所の創出
高齢者の活動の場を創出し、社会参加を支援すること。
●他市の先進事例を参考に介護予防に有効な取り組みを研究する
未病センターや健康マイレージ制度など他市の先進事例を参考に、介護予防に有効な取り組みを研究すること。
理事者からの進捗状況報告(要約)
在宅医療・介護連携の推進と相談支援体制の整備について
●在宅医療・介護連携の推進
平成29年3月に協定を締結して以降、地域包括支援センターと松山市医師会が設置する在宅医療支援センター、松山市歯科医師会が設置する総合歯科医療連携室、愛媛県薬剤師会が設置する在宅薬局支援センターとの連携を進めるため、相談窓口担当者の連絡会を開催した。
また、3師会と介護関係者による医療と介護の連携の現状や課題の抽出などについての意見交換会を開催しており、今後も定期的に開催して関係機関との連携を進めていく。
介護人材等の確保については、介護従事者のキャリアアップ研修の実施や介護職員の処遇改善に向けた助言、事業者連絡会で愛媛県などが実施する就労支援や介護力向上などの研修会等の周知などを行っており、今後も生活支援型訪問サービス従事者の養成研修の実施や介護従事者のニーズにあった研修を実施し、介護人材の確保や育成に努めていく。
●地域包括支援センターの充実・強化
高齢化の進展に伴い、今後も地域包括支援センターの役割は重要になってくることから、センターの充実・強化について、今後、検討していきたいと考えている。
●生活支援の基盤整備とネットワーク化
本市は、協議体を市全域の第1層、市内を9ブロックに分けた第2層A、日常生活圏域である民生児童委員地区ごとの第2層Bの3つに分けており、現在、第2層A協議体を9ブロックすべてで開催した。平成30年1月には、関係団体等の代表8者による第1層協議体を開催することにしており、関係機関等とのネットワークづくりや各地区で地域資源の把握などに取り組んでいる。平成30年度以降は、市内40地区の第2層B協議体の開催を順次進めていく。
●市民や事業者への丁寧な周知・啓発
市民向けに行っている説明会(19回548人)での介護保険制度や在宅介護や医療についての説明、事業所連絡会や研修会などで介護関係者等へ地域包括ケアシステムの構築に向けた事業説明などを行ったほか、医師会等が行う講座や研修会等の周知を行うなど市民や事業者への周知啓発に取り組んでいる。
認知症施策の推進について
●認知症への相談・支援体制の向上
認知症初期集中支援チームでは、専門医を4名配置しており、これまでに4件のチーム支援を行っている。地域包括支援センターとの意見交換会やチーム員研修を行うなど認知症への相談・支援体制の向上に取り組んでいる。
●認知症サポーターの積極的な養成
市職員も対象とした本庁での講座開催や小中学生を対象とした内容での講座開催など、より多くの方に認知症サポーター養成講座を受けていただけるよう取り組んでいる。
また、松山市認知症SOSネットワーク登録団体や警察等による認知症施策推進会議を開催し、認知症サポーター養成講座受講団体も含む組織間での連絡会を行っており、今後は、松山市ボランティアセンターなどと連携し介護施設などでのボランティアなど認知症サポーターへの活動の場の紹介などを行っていきたいと考えている。
●他市の先進事例を参考に有効な取り組みを研究する
松山市では、認知症高齢者へGPS端末の貸し出しを行う徘徊高齢者家族サービス事業やメール登録により捜索協力を行う松山市認知症SOSネットワーク事業を行っているが、今後も他市の事例なども参考に取り組みを研究していきたいと考えている。
介護予防について
●ふれあい・いきいきサロンの活動応援
松山市社会福祉協議会に配置しているサロンコーディネータがサロンを訪問し活動支援や助言等を行っており、活動事例発表や簡易な体力測定方法についての研修会も開催しサロン活動を推進している。また、平成29年度に移行しなかったサロンには、理由やその後の活動状況を把握し研修会の案内を行っている。今後も、サロンコーディネータの訪問等により、地域での活動についての相談や助言を行うこととしている。
●高齢者の出番と居場所の創出
高齢者の活動の場を創出し、社会参加を支援する事業として、介護保険サービスの対象外の高齢者が、デイサービスセンターに通所し、創作・趣味・スポーツ等の活動を行う「生きがいデイサービス事業」や、各地区の高齢クラブに補助を行い、健康増進、社会奉仕、教養講座、レクレーション等の活動を行う「高齢クラブ運営助成事業」、また、各会員が地域において介護に関する相互活動を行う「ファミリーサポートセンター(介護)事業」を実施している。
なお、今後も他市の事例を調査・検討していく。
●他市の先進事例を参考に介護予防に有効な取り組みを研究する
本市では、「ふれあい・いきいきサロン事業」や地域包括支援センター等による運動自主グループの育成支援などを行っており、今後も介護予防につながる取り組みを進め介護予防活動を推進していく。(介護保険課)
本市では、市保健所に、未病センターのように血圧や骨密度、血管年齢などの測定コーナーを設け、健康相談や健康情報の提供を行っているほか、松山城山頂広場にスタンプを設置し、登頂するごとに押印していただき、100回スタンプを貯めると記念証をお渡しする松山城登頂ウォーキングを実施している。今後も、本市独自の取組のほか、他市の事例も参考に高齢者の健康増進、介護予防に取り組んでいきたいと考えている。
(健康づくり推進課)
