(実施報告)夏目漱石没後100年記念俳都松山キャラバン2016in新宿

更新日:2016年7月29日

平成28年7月17日、新宿区立四谷区民ホールで夏目漱石没後100年記念「俳都松山キャラバン2016in新宿」を開催しました。集まった約450人の観客が夏井いつきさんの講演と、囲碁や将棋のように俳句の出来を競う「俳句対局」を楽しみました。


会場は新宿区立四谷区民ホール

第1部講演会「十七音が景色を変える」

俳都松山大使の夏井いつきさんが、「十七音が景色を変える」をテーマに俳句の魅力を話しました。

『俳句の種を蒔く仕事』
皆さんは俳句に興味を持ち始めてくれた「チーム裾野」。「チーム裾野」の存在は、俳句の普及にとって重要。
イベントの共催である新宿区は漱石生誕の地であり、松山と漱石でつながるまち。縁を大切にしたい。


俳句の裾野を拡げ、俳句の種を蒔く

『俳句甲子園について』
 俳句甲子園出場のOBOGがボランティアで大会の運営を手伝ってくれている。中には俳句甲子園に魅了され、大学卒業後に松山で教師になり、生徒を率いて出場する人、県外から生徒を率いて松山の全国大会にやってくる人など、俳句甲子園によって松山を愛してくれる若者が増えているのはとても喜ばしい。

『俳句があふれるまち松山』
 俳句を愛する人に松山に来てもらえるよう、一年中何らかの俳句イベントを行うのが目標。
松山は自治体で唯一、俳句の公式サイト外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。「俳句ポスト365」(外部サイト)を運営している。投句者が松山に来てまで絶対見たいという場所(名所)が、路面電車「勝山町」の電停から見える電光掲示板。入賞句はその掲示板に掲出されるため、電停で電車に乗らずに掲示板を撮影する入賞者およびその友人たちが続出した。最近では、撮影者に市民が声を掛けるほど有名になりつつある。

 チーム裾野の皆さんには俳句を楽しんで欲しい。上手い下手は関係ない。とにかく作ってみることが大切。良い句が出来なくても楽しめれば良い。俳句を楽しむことが大事です。


松山を愛してくれる人が増えて嬉しい

『道後温泉保存修復工事について』
文化・ことば課の西村課長を檀上へ呼び込み、夏井さんが県外の人からよく聞かれるという道後温泉本館の改修工事について質問。西村課長は、「今年や来年に工事は入りませんし、今後工事になっても、本館を閉鎖することはありませんので御安心ください。また、来年末には日本最古と言われる温泉にふさわしい新たな入浴施設ができますのでお楽しみください。」と説明。また、夏井先生に促され、渾身の一句「夏の日に親子一緒に苺狩り」を披露するも会場の反応は…。


西村課長登場


俳句を楽しみましょう

第2部俳句対局トーナメント戦

俳句対局

俳句対局とは、囲碁や将棋のように制限時間内に俳句を作り合う、一対一の句合わせ対決です。目の前で俳句が生まれる緊張感と高揚感を味わえます。夏井いつきさんによる実況解説付きです。今回は、夏目漱石没後100年を記念し、席題句に全て夏目漱石の俳句を使用しました。

夏井先生、進行の家藤正人さんが対局の説明中、観客に促されて実作を披露。
家藤さんが第一部講演中に起きた地震を詠み「七月を地震(ない)にどよめく四百人(しひゃくにん)」
夏井先生「外野席に大夕立のどよめける」(「どよめく」をいただく)。

【選手】

阪西敦子さん、北大路翼さん、中町とおとさん、大塚凱さん


(左から)阪西敦子さん、北大路翼さん、中町とおとさん、大塚凱さん

【審査員】

池田澄子さん、坊城俊樹さん、櫂未知子さん、岸本尚毅さん


(左から)岸本尚毅さん、櫂未知子さん、坊城俊樹さん、池田澄子さん

第一試合

抽選の結果、第一試合は、阪西敦子さんと北大路翼さんの対戦です。
阪西さんが「誰かに替わってもらいたい、帰りたい」とコメントし、会場が笑いに包まれました。対する北大路さんは、「仲間が誰も応援に来てくれなかった。孤独に戦う」とコメント。
席題句は、夏目漱石の「ほのぼのと舟押し出すや蓮の中」です。
北大路さんが「舟券」の句を作ってらしさを見せます。「冷房」の季語を使った北大路さんに対し、阪西さんが「炎天」の季語で返すなど、二人の対比が興味深い対局となりましたが、結果は北大路さんが勝利しました。
「舟という言葉が始めに出たので運が良かった」と北大路さん。


独特の雰囲気で会場を魅了する北大路さん


緊張が解け、笑顔が出てきた阪西さん


共鳴し合うように俳句を作り上げます

第一試合内容 席題句「ほのぼのと舟押し出すや蓮の中」
作者 俳句 点数 池田 坊城 岸本 減点
北大路 翼 冷房の上に外れてゐる舟券 7.50 8 7 7 8 0
阪西 敦子 待たされてをり券売機前炎天 7.00 7 7 7 7 0
北大路 翼 アイスクリーム前後左右のなかりけり 7.00 8 6 8 6 0
阪西 敦子 後すこしなにかの足らぬ天道虫 6.00 6 5 7 6 0
北大路 翼 足の裏よろこんでゐる海開き 6.00 6 4 8 6 0
阪西 敦子 海手前にひげ見えてをりハンモック 5.75 6 4 6 7 0

第二試合

中町とおとさんと大塚凱さんの対局は、昨年の東京トーナメント決勝戦の再現になりました。大塚さんが「前回は中町さんに勝利したが、大会の最高点句は中町さんの句だった。今回は最高点句も狙いたい」とコメント。
中町さんは「出来ればリベンジしたい。他にも強敵揃いなので頑張りたい」とコメント。
席題句は、夏目漱石「帰らふと鳴かずに笑へ時鳥」です。
二人とも句作が早く、スピーディーな勝負に。夏井先生「二人とも句の感じが似ているだけに特に負けられないだろう」。家藤さん「二人とも綺麗な句、端正な句」とコメント。
結果は、両者一歩も譲らず、互いに20点で同点。対局ルールにより、時間を多く残していた中町さんが白熱した試合を制しました。


奇しくも昨年の決勝戦の再現


昨年の雪辱を果たせるか


最高点句も狙う

第二試合結果
手番 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 中町 とおと 20.00 2分16秒 0.00 20.00
後手 大塚 凱 20.50 1分02秒 -0.50 20.00
第二試合内容 席題句「帰ろふと泣かずに笑へ時鳥」
作者 俳句 点数 池田 坊城 岸本 減点
中町 とおと 泣きたい空へビールジョッキをぶつけ合ふ 7.00 8 7 7 6 0
大塚 凱 水無月のノートに映りさうな空 6.50 6 6 8 6 0
中町 とおと 炎天を映して水の揺らがざる 6.25 7 5 7 6 0
大塚 凱 短夜のテレビに映る低い鼻 6.75 7 5 7 8 0
中町 とおと 夏暁を低く鴉の啼き渡る 6.75 6 6 8 7 0
大塚 凱 子が啼いて頭の中が灼けてゐる 7.25 8 8 8 5 0

決勝戦

北大路さんと中町さんによる決勝戦。
北大路さん「3点か10点かという句を狙って頑張ります」とコメント。
中町さん「私も10点を狙って頑張ります」とコメント。独特な風貌の北大路さんとしめやかな着物姿の中町さんの対比を見て、夏井先生が「俳句は誰にでも開かれているという良い絵です」と笑顔で話します。
席題句は、夏目漱石句「杉垣に昼をこぼれて百日紅」です。
北大路さんは「夜」をテーマとするなど、自分のテリトリーに会場や対戦者の中町さんを引き込む句作を展開します。対する中町さんも夜をテーマにしつつ、北大路さんとは異なる趣向の句を披露する形で受けて立ちます。
中町さんがリードする展開で迎えた中、北大路さんの最終句「熱帯魚夜にだけ開く美容院」が本日の最高点を獲得し、逆転した北大路さんが0.5点差で勝利。10月に松山で行われる俳都イベントに東京代表として出場することになりました。


「俳句」の間口は広い


詠む姿も俳句も美しい


勝利のガッツポーズ

決勝戦結果
手番 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 北大路 翼 23.00 2分29秒 0.00 23.00
後手 中町 とおと 22.50 2分07秒 0.00 22.50
決勝戦内容 席題句「杉垣に昼をこぼれて百日紅」
作者 俳句 点数 池田 坊城 岸本 減点
北大路 翼 昼寝覚穴のどこかにゐるやうな 7.25 8 8 7 6 0
中町 とおと 目の覚めていつしか蟻の道にゐる 7.50 7 8 7 8 0
北大路 翼 目薬の小さき気泡熱帯夜 7.50 8 7 8 7 0
中町 とおと 空蝉にかすかな夜気が満ちてゐる 8.00 8 8 8 8 0
北大路 翼 熱帯魚夜にだけ開く美容院 8.25 6 9 9 9 0
中町 とおと 熱の夜の枕辺を鳴く蜩よ 7.00 6 7 7 8 0

審査を終えて。坊城俊樹先生のコメント
「熱帯魚の句は、北大路さんらしさが出た素晴らしい俳句。熱帯魚の季語と夜にだけ開く美容院との取り合わせもよく効いている。」

審査を終えて。池田澄子先生のコメント
「私は出たくないけど、決勝戦はいい句ばかりでビックリした。けれど、私は出たくない(笑)。」

夏井いつきさんのコメント
「相手に触発されて自分にないものが出るのが俳句対局。自分のフィールドに引き込もうとする北大路さんの句と、相手のフィールドにあっても句に自分らしい気品を失わない中町さんの句との対決は、とても見応えがありました。」

優勝した北大路さんに、俳都松山のロゴマークが入った優勝の証が手渡されました。
北大路さんには、平成28年10月29日(土曜日)松山で行われる俳句対局イベントに参加していただきます。


俳都松山でお待ちしています

イベント終了後のお客様の感想(回収させていただいたアンケートより抜粋)

・俳句対決ならではの流れがあって、本当にワクワクしました。
・ことばでこんなに遊び、楽しめるのかと思いました。
・生きた言葉が飛び交うよい会でした。
・即吟でこれほど素晴らしい句ができていくことは、驚きでした。
・中学生の時に夏井先生に国語を教えてもらった生徒です。今日の軽妙な語りは中学時代の授業を思い出しました。松山を離れて俳句とは縁のない生活を送っていますが、今日のお話を聞いてまた俳句対局を見て俳句を作ってみたいと思いました。

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文化・ことば課

〒790-8571 愛媛県松山市二番町四丁目7番地2 本館5階

電話:089-948-6952

E-mail:bunkakotoba@city.matsuyama.ehime.jp

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