(実施報告)子規・漱石生誕150年記念 俳都松山宣言2017~十七音が未来を変える~

更新日:2017年12月4日

平成29年11月5日、松山市民会館大ホールで子規・漱石生誕150年記念「俳都松山宣言2017~十七音が未来を変える~」を開催しました。集まった約1,400人の皆さんが藤本敏史さん(FUJIWARA)と村上健志さん(フルーツポンチ)、俳都松山大使の夏井いつきさんのトークショーと、囲碁や将棋のように1対1で俳句の出来を競う「俳句対局」を楽しみました。

第1部トークショ-「気づけば俳句がそばにいた。」

俳都松山大使の夏井いつきさんと藤本敏史さん(FUJIWARA)、村上健志さん(フルーツポンチ)が「気づけば俳句がそばにいた。」をテーマに俳句の魅力を話しました。

『俳句との出会い』
俳句番組に出演して初めて俳句に出会ったという藤本さん。それまでは一切俳句の経験がなく、番組で最初に作った俳句は最下位でした。厳しい評価をつけた夏井さんも「ここまで来るとは思わなかった」と藤本さんの成長に驚いているようでした。
一方、村上さんは元々短歌をしていて、短歌の世界でも才能を開花させていました。短歌を始めてから1年ほど後に俳句を始めたそうです。
「今日の観客の方の中にも俳句をしている方が多いんじゃないですか?」と司会者が聞きましたが、「顔見りゃわかる、そんなことはない」という夏井さんの言葉通り、実際に俳句をしている方は少ないようです。

『ATM(銀行)ではなく吟行です』
「大変なんですよ。」と藤本さんは苦労を口にしました。奥さんと娘さんが寝静まった夜や、移動中の新幹線で俳句を作るとのこと。村上さんは「僕は時間があるので日中にカフェなどに行って、俳句を作ります。」と俳句にたくさんの時間を費やしているようです。
「私は村上さんが一人で吟行に行くことに感動したんですよ。」と夏井さんは村上さんの努力を語ります。しかし、観客の中には「吟行」という言葉にピンと来ていない方もいるようで、「皆さん、ATMじゃないですよ、色々な場所に出て俳句を作ることを吟行と言うんです。」という司会者の言葉に、謎が解けスッキリとした顔で納得されていました。
「人生すべて吟行。」という夏井さんの名言に、吟行の大切さを再認識しました。

会場のお客さんにも挙手をお願い
会場のお客さんも巻き込んで

『二人の作品』
番組内で発表した今までの俳句の中で、いいなと思った俳句を持ってきていただきました。夏井さんは「俳句あるあるなんですが、自分が一番いいと思った俳句が、一番つまらない、ということがよくあるんです。自分で自分の俳句を客観的に見る訓練が必要。」と裏話をしました。

<藤本さんの俳句>
セイウチの麻酔の効き目夏の空

この俳句は空と海だけが写った、縦も横も分からない写真から生まれました。「麻酔の効き目」がいいポイントだと夏井さんは話します。心が優しい方なのが俳句からも分かります。「特待生や名人は人の句を見る目もある。」と夏井さん。初心者の方にはよく分からない俳句でも、俳句に親しんでいる方には伝わるものがあるそうです。

節分のセンサーライトが照らす闇

節分に、人も通っていないのにセンサーライトがパッとついた怖さを表現した句。藤本さんにとっては挑戦の句のようで、「不気味な俳句はフジモンの体にはない。東国原さんを意識したんですかね。」と夏井さんは話します。

<村上さんの俳句>
テーブルに君の丸みのマスクかな

「マスク」が冬の季語です。「この俳句を見て、こいつちょっと気持ち悪いなと思った。彼女いないんで、これ想像なんですよ。」と藤本さん。そして、「シンプルでいい句だと思います。でも、よく考えたら、だんだん気持ち悪く感じます。」と夏井さん。村上さんの想像の「付き合っていないから、触れられない君の丸みをじっと見ている。」という状況を俳句にしたそうです。

新日記とめはねに差すひかりかな

こちらは村上さんが特待生になってから初めての句です。「日記を書き始める時は、きれいな字で書こう、今年一年も良い年にしよう、という思いとともに姿勢が正される。これを『とめはね』に託して、そこに光がさしてきた、という感じ。」と村上さん。「小さいところを丁寧に描いたら、ちゃんとやれる」と夏井さんは話しました。

『俳句の魅力』
「俳句の魅力って何ですか?」との問いに、「最近街に出た時、おじさんおばさんがすごく声を掛けてくれます。俳句ってすごいですね。大学の教授みたいな方が僕のことをほめてくれるんですよ。」と藤本さん。
「今までは通り過ぎていた景色をよく考えるようになったことです。見える色が一つ増えました。」と村上さんからは名言が生まれました。
夏井さんからは「今年の夏は俳句甲子園に挑戦したから、来年は俳句対局だね。」と二人に課題が課せられました。

第2部俳句対局【第3回松山市長杯】

俳句対局

ダウンロードのリンク 新規ウインドウで開きます。俳句対局ルール(2015年11月版)(PDF:228KB)
俳句対局とは、囲碁や将棋のように制限時間内に俳句を作り合う、一対一の句合わせ対決です。目の前で俳句が生まれる緊張感と高揚感を味わえます。夏井いつきさんによる実況解説付きです。今回は、子規・漱石生誕150年を記念し、席題句に全て正岡子規の俳句を使用しました。

【選手・審査員】

選手・・・北大路翼さん、加藤いろはさん、岡田由季さん、鈴木総史さん
審査・・・宇多喜代子さん、高野ムツオさん、坊城俊樹さん、岸本尚毅さん

第一試合

抽選の結果、第一試合は、加藤いろはさんと鈴木総史さんの対戦です。
「熊本城は再建中なんですよ。すっきりした松山城を見て、心が和みました。」と熊本を代表して頑張る加藤いろはさんと「一つ目の試合に集中して、いつもの勉強が発揮できるように頑張ります。」と謙虚な鈴木さん。静かに戦いが始まりました。
零番句は、正岡子規の「無花果ニ手足生エタト御覧ゼヨ」です。
物悲しくも趣がある俳句を生み出す加藤さん。動植物を活かした彩のある俳句を披露する鈴木さん。結果は鈴木総史さんが勝利しました。

第一試合結果
手番 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 加藤いろは 18.50 2分48秒 0 18.50
後手 鈴木総史 20.75 2分11秒 0 20.75
第一試合内容 零番句「無花果ニ手足生エタト御覧ゼヨ」
作者 俳句 点数 宇多 高野 坊城 岸本 減点
加藤いろは 一人より二人はさびし大花野 5.50 7 6 7 6 -1
鈴木総史 人間は湖をやさしく初紅葉 6.50 5 8 6 7  
加藤いろは 湖に近き常宿月今宵 5.75 5 6 5 7  
鈴木総史 宿なべて衰へてをり櫟の実 7.50 7 8 7 8  
加藤いろは 花ひひらぎ爪の先まで衰へて 7.25 6 8 6 9  
鈴木総史 先生は鵯のはやさで歩き来て 6.75 6 5 7 9  

第二試合

第二試合は岡田さんと北大路さんの対決です。
「緊張していますが、頑張ります。」という岡田さんのコメントに、「緊張していますが、頑張ります。」と真似をする北大路さん。キャラクターの違いが表れる一戦となりました。
零番句は正岡子規の「名月や伊予の松山一万戸」です。
艶やかな俳句が多い岡田さんと、句によって個性が変わる北大路さん。
とても見ごたえのある試合になりました。結果は岡田さんが勝利しました。

第二試合結果
手番 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 岡田由季 21.25 1分59秒 -0.5 20.75
後手 北大路翼 19.00 3分06秒 0 19.00
第2試合内容 零番句「名月や伊予の松山一万戸」
作者 俳句 点数 宇多 高野 坊城 岸本 減点
岡田由季 色変へぬ松に男をかくまひぬ 8.25 9 7 8 9  
北大路 翼 風邪心地ブラジャーをする男かな 6.25 5 5 6 9  
岡田由季 ブラジャーを月の光に当ててをり 7.00 6 6 9 7  
北大路 翼 当てにけり宅急便の蜜柑の香 5.75 6 6 5 6  
岡田由季 急坂を上り切つたる萩の風 6.00 5 7 6 6  
北大路 翼 三限に急ぐ蜻蛉が見えたから 7.00 8 6 6 8  

決勝戦

鈴木総史さんと岡田由季さんによる決勝戦。

鈴木さんは「失うものはないので、頑張ります。」とコメント。それに対し、「若い力に負けないように頑張ります。」と岡田さん。静かに闘志を燃やす二人、どちらが優勝するのでしょうか。

零番句は正岡子規の「鶏頭の十四五本もありぬべし」です。
岡田さんの男性俳句シリーズや鈴木さんの多彩な植物が登場する俳句。俳句を読み上げる司会者の家藤さんを苦しめる「東京特許許可局鶏頭花」という早口言葉のような俳句も登場しました。
また、岡田由季さんの最終句は、「秋の雲正座とあぐら向ひあひ」という、あぐらをかく鈴木さんと向かい合った今日の日を題材にした俳句で、これまでに対局の最高点を記録しました。

結果は岡田由季さんの優勝でした。

決勝戦結果
手番 名前 俳句点 残り時間 時間点 合計 勝敗
先手 鈴木総史 34.75 3分32秒 0 34.75
後手 岡田由季 37.75 4分13秒 0 37.75
決勝戦内容 零番句「鶏頭の十四五本もありぬべし」
作者 俳句 点数 宇多 高野 坊城 岸本 減点
鈴木総史 頭取のつまくれなゐにたたずみぬ 7.50 7 9 8 6  
岡田由季 長き夜のダヴィンチ描く頭蓋骨 7.50 7 7 9 7  
鈴木総史 花蕎麦の点描に似て吹かれけり 6.25 6 6 6 7  
岡田由季 沸点の低き男やねこじやらし 7.75 9 8 7 7  
鈴木総史 ひかがみの低さに菊を許したる 7.25 8 5 7 9  
岡田由季 東京特許許可局鶏頭花 6.50 7 5 8 6  
鈴木総史 東より煙の流れ秋の園 6.50 8 6 6 6  
岡田由季 すすき原煙草のけむり丸く吐く 7.00 7 7 7 7  
鈴木総史 雲いつもひかりを吐いて山葡萄 7.25 7 9 6 7  
岡田由季 秋の雲正座とあぐら向かひあひ 9.00 9 9 9 9  

審査を終えて。宇多喜代子先生のコメント
「即吟のおもしろさを目の当たりにしました。80の私と20の青年が同じ俳句で楽しめる。年をとってもこのように遊べるんだなと思いました。」

村上さんのコメント
「まったくもってこれはできない!俳句がキライになりました!ありがとう!」

藤本さんのコメント
「格闘技のようですね!尊敬します!」

夏井いつきさんのコメント
「私たちは俳句を遊び尽くそうという思いで活動を行っています。俳句対局は真剣に遊ぶというのが醍醐味です。皆さんは違う色が見えるようになりましたか?次は村上さんが出てくれるのではないですかね。」

優勝した岡田さんに、賞状と優勝カップ、副賞目録が手渡されました。

優勝カップをもつ岡田さん
優勝おめでとうございます

岡田さんのコメント
「8月の斑鳩での大会が終わってから、今日までお腹に重たい石がありましたが、優勝できてよかったです。」

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