第24回瀬戸内海俳句大会の審査結果をお知らせします
更新日:2026年2月17日
第24回瀬戸内海俳句大会(令和7年度)
皆様からご応募いただいた瀬戸内海の美しい自然や暮らし、行事などを詠んだ俳句の中から、入賞句が決定しましたので、お知らせします。
応募件数
1189句(小学生の部…214句 中学生・高校生の部…175句 一般の部…800句)
審査員
- 八木 健
- 松本 勇二
- 原田 マチ子
大賞(一句)
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 磔刑の姿に干さる瀬戸の蛸 | 大石 洋子 |
| 選評 | |
日本では古くから食され、「出雲国風土記」にも掲載されている<蛸>は、夏がもっとも美味なので夏の季語となっている。特に干し蛸は瀬戸内海沿岸の夏の風物詩として有名である。竹串などで形を整えて天日干しにされた姿はまさにはりつけの刑のようで、民を救うために十字架刑に処せられたイエス・キリストを想起した。わずか十七文字のなかに聖から俗への異色の展開が試みられている。着眼点の見事な句と思う。 |
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優秀賞(三句)
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| セミの声なんだなんだと響きけり | 小立 龍輝 |
| 選評 | |
セミの声をうるさく感じたり逆に少しさみしく感じたり、という句はよく見かけます。ところがこの句では「なんだなんだと」言っていると書いています。この「なんだなんだ」がとても新鮮な一句にしあげました。そして、セミがまるで人間のように思えてくることもこの句の魅力です。作者のゆたかでおおらかな感性をたたえます。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
島つなぐペダルの音や夏の道 |
中川 颯 |
| 選評 | |
中島の夏の一大イベントであるトライアスロンのペダルの音かと思う。海と島を眺めながら海岸線を二往復し、約四〇キロの道のりを駆け抜けた。ことのほか暑かった昨夏も約四三〇人の鉄人たちが参加。島内の道は人と人との温もりをつなぐ道ともなり、波の音や葉擦れ、応援の声などが聴こえてくるよう。素直に表出した<夏の道>に、島に集う人々の喧騒が透けてみえる。これからも素直な俳句を作ってください。おめでとうございます。 (原田 マチ子 選評) |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
海賊に憧れる子や夏の海 |
大坪 覚 |
| 選評 | |
海賊は、現代の瀬戸内海には存在しない。子は空想の中で理想の海賊を思い描く。「海賊になりたい」は、子どもの「ロマン」である。海賊に憧れるのは海賊がカッコいいからである。しかし、海賊が好きなのは、そもそも海が好きだからである。子どもの想像力を育み、憧れの対象を創造させる力をもった瀬戸内海の海の力を思う。夏の海のきらめきと、子どもが海を見る眼差しが見える句である。 |
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特別賞(一句)
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 逃げ水にライバル歪みゐて速し | 園田 志保 |
| 選評 | |
逃げ水は、晴れた暑い日にアスファルト道路などで、遠くに水があるように見える現象です。その逃げ水は熱のせいか人や物がゆらゆらと揺らいで見えます。それを「歪みゐて」と表現して秀抜です。そしてそのライバルが「速し」と畳みかける言語感覚も光っています。先を急いでいるだけのように見えるレースに物語があることをふと思わせる一句でもあります。 |
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八木健賞(特選二句・入選五句)
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 海賊の島をはみ出し蝉時雨 | 篠原 みどり |
| 選評 | |
海賊は、かつて瀬戸内海の治安を守り、強大な力を誇る存在だった。その海賊のことは、今は伝え聞くだけの「伝説的」な存在になっているが、島や沿岸に住む人たちの中には、自分たちは間違いなくその海賊の子孫なのだと思いたい人も多い。令和の世に生きていて、そのルーツが海賊の島だったことは、ロマンとして大切にしたいことでもある。蝉時雨の激しさにかつての海賊の活躍が重なる。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 鯛網の胸の高鳴る重さかな | 塚本 治彦 |
| 選評 | |
| 鯛網は、生きている鯛を引き上げるのだから、かなりの重量となる。一本釣りでも、引き上げるまでに存分に泳がせて疲れさせてからということだから、たくさんの鯛が暴れるのを引っ張り上げるのは相当な力を必要とする。まるで海の一部を削り取るかのようだ。「胸の高鳴る重さ」には単なる重量だけでなく、自分の鼓動とわくわく感、鯛が跳ねて鯛の命が躍動する感じがうまく表現されている。 | |
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| とりどりの波の音聴く午睡かな | 野崎 精子 |
| 選評 | |
| 午睡は昼寝のこと。作者は海岸近くで波音を聴きながら、うとうとしているのである。「とりどりの」が作者の発見である。耳を澄ましていると、波は大小、強弱、リズムなどが様々で、同じようでいて、いろいろな音が重なっている。心地よい島風に吹かれながら、耳の奥で波音がだんだんと遠くなり近くなりして眠りに落ちる。 | |
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| もちつきの声をかさねる島の中 | 若狹 早 |
| 選評 | |
| 杵と臼を使っての昔ながらのもちつきである。もちつきをする時はかけ声をかけ合う。「返し手」が臼の中で餅を返す瞬間と、「搗き手」が杵を振り下ろすタイミングがピタッリ合ってリズミカルである。ぺったんぺったん。ぺったんこ。搗きあがると歓声があがり、その場で分け合って早速に味わう。声も喜びも重なって嬉しいね。 | |
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 沢蟹のわつと千匹横走り | 大本 早美 |
| 選評 | |
| 沢蟹の集団行動は見事である。集団となればかなりの存在感がある。「わっと千匹」には、湧き出たように突然現れた蟹の多さと、作者のわっと驚いた瞬間の気持ちが表現されている。実際に見たことはない読者にも、千匹くらいいるんじゃないかと思うようなたくさんの蟹が目の前を一斉に横切っていく情景を見せてくれる。 | |
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| あきの空二つのしまがおるすばん | 小島 都愛 |
| 選評 | |
大きな風景である。瀬戸内海の上空には真っ青な秋の空。そしてその空の下には、ぽつんと置き忘れられたような島が二つ。瀬戸内海で島がお留守番をしているのである。なんとも微笑ましい風景である。島を擬人化しているのだが、作者自身のお留守番とも重なっているのだろう。これまで誰も詠んだことがない発想の句である。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 右に四国左に本州鰡跳ねる | 北代 瑞稀 |
| 選評 | |
| 作者は、上空から瀬戸内海を見下ろしている。しかも本州と四国を視野に収めている。いわば「俯瞰」の景である。しかも視点は海面にあり、「鰡」が跳ねているのを見逃さない。全体を広い視野で見ている一方で、作者が鰡の目になっているようにも読める。俳句をつくる時に、視点が思いがけない所にあると面白い句が出来る。 | |
松本勇二賞(特選二句・入選五句)
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 蜜柑もぎ時給談義で船を待つ | 舛田 順一 |
| 選評 | |
蜜柑の収穫シーズンのみに、アルバイトのようなかたちで働いている方々の時給談議でしょうか。「うちはいくらだ」「へえー、高いね」などという会話が聞こえてきそうです。それが行われている場所が船の待合室という状況設定がみごとです。明るく生きている人々の笑顔が見えるようです。生活あるいは日常を句に掬い上げることに長けた作者です。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 月食やうさぎ小舟で海へ出る | 大野 美代子 |
| 選評 | |
月食とは「地球が太陽と月の間に入り、地球の影が月にかかることによって月が欠けて見える天文現象。」とあります。月食を眺めながら、うさぎが小舟に乗って海に出ていくように感受した作者です。もとより虚構ですが、どこか童話のようでもあり妙に頷かせるものがありました。虚構は「あるかもしれないな」と思わせたら成功です。感覚を優先させて書きロマンあふれる一句となりました。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 唇に塩辛き風夏来たる | 門野 絢奈 |
| 選評 | |
| 生活をしていて、「夏が来た」と感じる一瞬は誰もが持っていると思います。作者は、唇に塩辛い風を受けた時そう感じたのです。幼少期に身体が覚えた季節の移ろいは、年月を経ても変わらないことを最近しみじみと思います。身体感覚をさっと一句に仕立てる手際をたたえます。 | |
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 朝霧は晴れて彼女の船が来る | 森岡 滋夫 |
| 選評 | |
海に立ち込めていた朝霧が次第に薄くなり、すっかり晴れ渡ったとき、彼女が乗った船がやってくるのです。霧が晴れたことで、決してじめじめしないぱっと明るい恋愛俳句となりました。「晴れて彼女の」という中七の句跨りも巧みです。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 鰯雲引き連れ瀬戸の船の旅 | 柴口 美紀 |
| 選評 | |
瀬戸内海を行くフェリーでしょうか。デッキに佇み空を見上げる作者が浮かびます。空には鰯雲が広がっています。その鰯雲を「引き連れて」と把握したことで句が光彩を放ちました。俳句は、誇張したり虚構を加えたりしますと句に血が通います。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| イノシシよ落ちたみかんだけ食べてくれ | 土井 翔喜 |
| 選評 | |
蜜柑農家を兼業している友人が「イノシシが蜜柑を食べてこまる。背が届くところはみんな食べている。」と言っていたのを思い出しました。せめて「落ちたみかん」だけ食べてくれたらなと思う作者です。切実ながらどこかユーモアがあるのは、しゃべり言葉のせいなのでしょう。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 石鎚を遠くにながめ立ち泳ぎ | 加藤 多作 |
| 選評 | |
泳いでいるのは瀬戸内海と読みました。石鎚山を眺めながら水泳ができる場所があるようです。立ち泳ぎをしている作者の存在と、遠くにそびえる石鎚山の距離感が壮大です。「立ち泳ぎ」というその場にとどまろうとする泳法でなければ「ながめ」が生きてこないでしょう。よい言葉のチョイスです。 |
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原田マチ子賞(特選二句・入選五句)
| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 水軍の末裔に会ふ薔薇の門 | 近江 菫花 |
| 選評 | |
瀬戸内海に本拠をもつ地方豪族であった水軍。特に室町、戦国時代には村上水軍が権威をふるった。<薔薇の門>より今治市のよしうみバラ公園かと思う。五月中旬から世界各地の美しい薔薇が咲き誇り、大勢の来園客で賑わうところ。作者の出会った水軍の子孫はどんな人であったのだろうか。歳月への畏敬の念が感じられる。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 定期船着く晩秋の声どつと | 川崎 由美子 |
| 選評 | |
離島在住で、島外へ通勤や通学する人にとっては欠かせない定期船。例えば、現在中島と松山を結ぶフェリーは、一日五便の東線と二便の西線が運航されている。掲句は七・十の破調であるが、 空気が澄みわたった十月の頃、船が着くたびにどっと聴こえる<晩秋の声>が言い得て妙。思い切った表白が功を奏している。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 完走の肺を満たせる檸檬の香 | 若狹 昭宏 |
| 選評 | |
水泳(スイム)、自転車(バイク)、ランニングの三種目を連続して行い、経過時間を競うトライアスロン。最後まで走りぬいた達成感はいかほどのものだったのだろうか。疲労困憊の肺を満たしたのは大いなる満足感と少し酸っぱい<檸檬の香>。瀬戸内地方で栽培されている果実を配したことで、素敵な詩となった。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 初潮や崎に残れる番所跡 | 渡部 美恵子 |
| 選評 | |
<初潮>は旧暦八月十五日の大潮のことで夜が最も高く、葉月潮や望の潮とも呼ばれる。一方、番所とは江戸時代に通行人や船舶などを見張り、徴税を行なった所。月に照らされて満々と潮が差すなか、岬に残った番所跡がうっすらと浮かび上がる。上五の「や」切れが心地よく、史実が景に厚みをもたらして格調高い。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
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| 合戦の声内海の秋の虹 | 出海 晶子 |
| 選評 | |
瀬戸内海には水軍にちなむ伝説や遺跡があちこちに残っている。しまなみ海道にある島の一つを訪ねたのであろうか。茫洋とした青い海を眺めていると、どこからか「えいえい」「おう」という閧の声が聞こえた気がした。夏の虹に比べると色も淡く、はかなく消えてしまう<秋の虹>。過去のすべてを包みこむような哀愁が漂う。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| もも色の貝がらさがす夏休み | 大森 悠菜 |
| 選評 | |
大人も子どもも楽しみな夏休み。七月下旬から八月終りごろまでの長い休暇なので、旅行や自由研究などふだんはできない体験ができます。海辺に行って拾ったきれいなもも色の貝がらは、工作や標本として飾ったのでしょうか。五・七・五のきちんとした形が上手です。思い出に残る楽しい夏休みになりましたね。 |
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| 入賞句 | 入賞者 |
|---|---|
| 烏賊襖搖るる海辺のみやげ店 | 藤本 としこ |
| 選評 | |
烏賊は種類によって漁期が異なるが、するめにするものは秋が最盛期である。縄を張りめぐらせた干し場に、白い烏賊がまるで襖のように居並び、揺れているさまは壮観そのもの。海沿いにあるみやげ物店もさぞ活況を呈していることであろう。大空の蒼色と烏賊の白色の対比が鮮やかで、しみじみとした秋風をも感じる句。 |
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