第20回瀬戸内海俳句大会の審査結果をお知らせします
皆様からご応募いただいた瀬戸内海の美しい自然や暮らし、行事などを詠んだ俳句の中から、入賞句が決定しましたので、お知らせします。
1478句(小学生の部…276句 中学生・高校生の部…139句 一般の部…1063句)
第20回瀬戸内海俳句大会表彰式を、今年こそは開催できることを願っていましたが、新型コロナウィルス感染症の全国的な広がりを受け、参加される皆様の健康と安全を考慮し「中止」とさせていただきました。
来年こそは皆様とお会いできることを楽しみにしております。
大賞
入賞句 |
入賞者 |
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井上 靖 |
選評 |
夕焼けの空が瀬戸内海に映り海全体が夕焼けに染まっています。この作品は二つの読み方を楽しめます。「夕焼けになりきっている」のは、「一物仕立ての句」とするなら海を擬人化した「瀬戸内海」となります。また、「取り合わせの句」とするなら「作者自身」です。シンプルな詠みぶりが、瀬戸内海の大きさや豊かさを表現し、解釈に奥行きを生みました。太陽と海が見事に融合した、スケールのとても大きな作品です。(八木 健 選評) |
優秀賞(小学生の部)
入賞句 |
入賞者 |
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魚崎 叶皐 (崎は、立さきです。) |
選評 |
海辺まで山(島嶺)が迫っている瀬戸内の一風景が眼に浮かびます。そして、目には山が、耳には潮騒や海鳴りが響いてきます。季節は盛夏…、山が最も生命感に溢れ勢いづく季節です。それを「海の音がはね返される」ほどだと詠んだのです。山と海という日本を代表する自然同士の季節の交歓関係を、作者は鋭い感性で捉え、それを平明に表現しました。視覚、聴覚を利かした共感覚の秀句です。(田島 明志 選評) |
優秀賞(中学生・高校生の部)
入賞句 |
入賞者 |
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飯本 真矢 |
選評 |
瀬戸内海を背景にして自撮り棒で撮影をしているという情景ですね。この句の楽しいのは、秋の空の高さを自撮り棒の長さと比較しているところです。このナンセンスな発想が、俳句の「俳」の本質を突いています。"自撮り棒"という現代ならではの機器を詠みこんだところも斬新で、作者の今の等身大の生活が表現されて句を生き生きとさせています。何気ない日常の一コマが、とても愉快な一句になりました。(八木 健 選評) |
優秀賞(一般の部)
入賞句 |
入賞者 |
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素々 なゆな |
選評 |
春半ばに南方から渡って来る「初燕」を見つけた一瞬、まさに春を体感しましたね。 瀬戸内海を一望する山の七合目に、足を踏ん張って立つ作者の声が、切れ字『や』の力を使うことで、読み手の心に新鮮に再現されます。しかも「燕渡りや」と上五を字余りにする上級のテクニックにより感動が濃く深くなり、「瀬戸一望の七合目」と、後半の心地よいリズムにも繋がってゆきます。理想的な字余りの一句かと思います。(夏井 いつき 選評) |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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清水 陽登 |
選評 |
俳句を鑑賞する時、「誰が」「どこで」「なにを感じた」のかを考えます。この句は、小学生が夏休みに訪れた海で、ふと感じたことを素直に詠んだものと思いました。浜辺には貝殻が転がっているだけですが、海の深い所にはどんな生き物がいるのだろう、海の底はどんな岩や海藻があるのだろう、なぞでいっぱいだと思ったのでしょうね。夏休みの自由な時間と、なぞいっぱいの海の底にわくわくの心が素直に描かれました。(八木 健 選評) |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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田邊 広大 |
選評 |
俳句は、季語ひとつでたくさんのことが表現されます。「冬夕焼」は、夏の夕焼けに比べて時間は短いのですが、ものの陰影がより際立って見えます。また、ほんの束の間ながら、夕焼けの赤い色は、より鮮明に心に残ります。ちょうど渡船も行き交い、漁船も沖から戻りつつある時刻の景でしょう。点在する小さな島々を、"散りばめられている"としたことで、瀬戸内海の風景が個性的に楽しく表現されました。(八木 健 選評) |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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吉沢 道夫 |
選評 |
「俎板を狭しと」の表現が、「大きい」と言わずして桜鯛の大きさや太り具合を上手く伝えています。また、この「狭し」とは、俎板からはみ出るほどの大きな桜鯛が勢いよく跳ねていることも表現しています。勢いのある新鮮な鯛を描くことで瀬戸内海への挨拶句にもなっています。あれこれ言葉を弄せず、「俎板を狭しと」だけで鯛の大きさや鮮度を見事に表現した、「切れ」のあるとても生きのいい作品に仕上がりました。(八木 健 選評) |
入選
入賞句 |
入賞者 |
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西野 周次 |
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土生 洋子 |
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藤本 哲哉 |
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山上 純玲 |
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杉野 圭志 |
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吾亦紅 |
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和田 昌子 |
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中崎 千枝 |
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村上 峻矢 |
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近藤 ほのか |
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菅 宏史 |
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杉野 圭志 |
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杉野 祐子 |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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羽住 博之 |
選評 |
「良夜」という仲秋の季語には「月」の文字はありませんが、「ああ、良いお月様、良い夜。」と思わず呟きたくなる、月がくまなく照り渡る夜のことです。多島美で知られる瀬戸内海を一望する橋か、機窓からの眺めかもしれません。寂しいまでに静かな夜の海に小さな島がもう一つ、たった今増えたように感じた瞬間を、心のままに自由に詠みました。海と空と島と、それぞれに月光の明暗を感じる、清らかで大きな一句です。(夏井 いつき 選評) |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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藤本 かず美 |
選評 |
暖かい海岸の砂地に多く咲く「浜木綿」は、晩夏の季語。神事やお祓いに使われる「木綿(幣)」に似た清らかな白い糸状の花です。その種は海流を旅するとも言われます。私の学んだ海沿いの小学校の校庭にも、蘇鉄の樹のそばに浜木綿が咲いていました。青空、潮騒、南国の陽射しに包まれた校舎。思い出の風景の中に咲く浜木綿が、「ほのぼの白き」という七音に誘われるように立ち上がってきます。(夏井 いつき 選評) |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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浅野 迦恋 |
選評 |
「炎天」という季語の力で、激しい陽射しに灼かれる島々の印象が鮮明に浮かびます。水平線がゆらゆらと炎えるように見え、足元には熱砂が広がり、潮風も吹いてきます。それらの風景が、「びんの底」の下五により一気に、びんの底を透かして見た、小さく歪んだ映像に凝縮されるのです。まるで、びんの中に炎天の島々を閉じ込めたような楽しさ。読み手の五感と心に、いきいきと響く作品です。(夏井 いつき 選評) |
入選
入賞句 |
入賞者 |
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浅野 迦恋 |
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宇川 誠剛 |
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高魚 由亀 |
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西村 義景 |
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金子 ひかり |
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高橋 朋花 (高は、はしごだかです。) |
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田邊 広大 |
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安野 陽音 |
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中矢 長宗 |
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森岡 滋夫 |
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鈴木 良二 |
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稲田 博美 |
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風森 漣翠 |
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熊本 与志朗 |
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花紋 |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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村上 峻矢 |
選評 |
「忘れ潮」とも言われる潮溜まり。そこに真っ青な分厚い夏空が映っています。峯雲も映っているかもしれません。作者はそれを、潮と一緒に空もそこに閉じ込められている、と感じたのです。無限の広がりを持つはずの空が、小さな潮だまりに閉じ込められたとみた、その関係の捉え方がとても新鮮で俳句的です。もちろん、潮が満ちて来れば又広い空に戻ることは分かっているのですが…。(田島 明志 選評) |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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谷口 春菜 |
選評 |
寒いけれども良く晴れ上がって穏やかな瀬戸内海の冬晴です。船窓からそれを眺めていたのでしょうか。そこに突然現れた巨大な鉄の構造物。それは瀬戸大橋でした。この無骨な無機質の骨組みを美しいと見るのでしょうか。それとも自然美を壊す無粋な物と見るのでしょうか。いずれにしても、この視覚イメージを不意に変更された愕きには共感を覚えました。瀬戸大橋を材料とした句としてはユニークな捉え方だと感銘を受けました。(田島 明志 選評) |
特選
入賞句 |
入賞者 |
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蛇石 菜々 |
選評 |
真夏の炎天に湧き上がる入道雲は、島を高くから見下ろしています。その入道雲に向かって防波堤が、真っ直ぐに伸びています。港を守ってくれる防波堤は、島の人にとっては「外」との接点でもあります。それをどんどん辿って行ったらいつかあの入道雲迄行けるかもしれない。作者はそんな思いを抱いたのかもしれません。高く屹立する入道雲と、一直線に伸びてゆく波堤…。その幾何学的関係の構図も面白い句です。(田島 明志 選評) |
入選
入賞句 |
入賞者 |
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清水 蒼大 |
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宇川 誠剛 |
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蛇石 菜々 |
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安野 陽音 |
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谷口 春菜 |
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菅 貴久代 |
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熊本 与志朗 |
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塚本 治彦 |
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平田 ただし |
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松田 夜市 |
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浜田 邦雄 |
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能田 よし子 |
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花紋 |
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水野 大雅 |