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概要

爬虫類

 新たにアカウミガメとタワヤモリの2種を加えた爬虫類は、2目9科17種が生息する。この種類数は愛媛県全域で生息が確認されている爬虫類全種に相当する。アカウミガメは海産動物分類群として扱われていたもので、タワヤモリは旧北条市で生息が知られていたものである。また、ミシシッピアカミミガメは北中米原産で外来種として定着している。

 絶滅のおそれのある種として掲載されたのは、アカウミガメ(CR+EN)、ニホンイシガメ(CR+EN)、ニホンスッポン(DD)、タワヤモリ(VU)、ジムグリ(NT)、タカチホヘビ(VU)、ヒバカリ(NT)、シロマダラ(NT)、ヤマカガシ(NT)、ニホンマムシ(NT)の10種で、市全体の爬虫類の約53%を占める(情報不足を除く)。

 旧版のレッドデータブック(2002年)からランク変更のあった種は、アカウミガメ(CR+EN+VUから)、ニホンイシガメ(DDから)、ジムグリ(DDから)、タカチホヘビ(DDから)、ヤマカガシ(VUから)、ニホンマムシ(DDから)の6種である。

 カメ類のうち、アカウミガメは、1999年6月20日、重信川河口の中州で上陸、産卵が目撃されているが、その後の情報は得られていない。ニホンイシガメに関する情報は今回得られなかった。クサガメは従来、日本在来種とされてきたが、ニホンイシガメやニホンスッポンと比べて古い文献に登場する時期が遅いこと、遺跡から骨が発見されていないことなどの理由から、外来種である可能性が高いとされている。ミシシッピアカミミガメは、もともとペットとして飼育されていた個体が野外に放逐されたもので、現在は他の淡水性カメ類よりも広く分布している。ニホンスッポンは、旧北条市および旧中島町では確認されなかった。

 ニホンヤモリやニホントカゲ、ニホンカナヘビは、平野部から山地部にかけて広く生息がみられているが、タワヤモリについては現在のところ旧北条市域でしか生息が確認されていない。

 ヘビ類8種のうち、タカチホヘビは石手川ダム周辺で生息していることが確認されたが個体数は少ないと思われる。ジムグリとシロマダラ、ニホンマムシについても限られた場所での情報しか得られなかった。ヤマカガシは、中島からも生息が確認された。シマヘビとアオダイショウは、旧北条市および旧中島町を含めて広い範囲で生息が確認された。ヒバカリは、旧北条市では確認されたが旧中島町では確認されなかった。

(執筆者:岡山 健仁)

両生類

 両生類は、2目6科13種が生息する(オオサンショウウオを除く)。この種類数は愛媛県全体で生息が確認されている両生類の約72%にあたる。これらのうち、ウシガエルは北米原産で外来種として定着している。

 絶滅のおそれのある種として掲載されたのは、イシヅチサンショウウオ(CR+EN)、アカハライモリ(VU)、ニホンヒキガエル(CR+EN)、トノサマガエル(CR+EN)、ニホンアカガエル(VU)、ヤマアカガエル(VU)、シュレーゲルアオガエル(NT)、カジカガエル(CR+EN)の8種で、市全体の両生類の約62%を占める。

 旧版のレッドデータブック(2002年)からランク変更のあった種は、アカハライモリ(CR+ENから)、ニホンヒキガエル(VUから)、ヤマアカガエル(NTから)、カジカガエル(NTから)の4種である。

 サンショウウオ科は、従来オオダイガハラサンショウウオとされていたイシヅチサンショウウオが高縄半島や久谷地区に生息している。現在のところ、米野町北三方ヶ森、大井野町福見山および明神ヶ森、久谷町縮川源流が確実な産地であるが、石鎚系などと比べると、市内の個体数はきわめて少ない。なお、これまで産地とされていない高縄山では今回の調査でも確認されなかった。

 アカハライモリについては、旧松山市での個体数の減少が著しい。旧北条市では丘陵地から山地で生息が確認されたが、旧中島町では確認できなかった。

 カエル類11種のうち、ニホンアマガエルやウシガエル、ツチガエル、タゴガエル、ヌマガエルの5種については前回と比べて個体数に大きな変動はないように思われる。ニホンヒキガエルは、旧中島町では確認されたが旧北条市では確認されなかった。トノサマガエルの生息については、久谷・窪野の両地区以外では生息が確認されておらず、従来広く生息していた重信川より北の地域からは、既に絶滅している可能性が高い。また、旧中島町および旧北条市では確認されなかった。カジカガエルは重信川中流および石手川では確認されず、旧北条市および旧中島町でも確認されなかった。ニホンアカガエル、ヤマアカガエル、シュレーゲルアオガエルについては、旧北条市では確認されたが旧中島町では確認されなかった。

 なお、オオサンショウウオについては、1934年と1940年にそれぞれ石手川で発見されているが、いずれも飼育個体の放逐である。

(執筆者:岡山 健仁)

両生類・爬虫類一覧

和名 科名 RDBランク
アカウミガメ ウミガメ科 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
ニホンイシガメ イシガメ科 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
イシヅチサンショウウオ サンショウウオ科 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
ニホンヒキガエル ヒキガエル科 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
トノサマガエル アカガエル科 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
カジカガエル アオガエル科 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
タワヤモリ ヤモリ科 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
タカチホヘビ ヘビ科 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
アカハライモリ イモリ科 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
ニホンアカガエル アカガエル科 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
ヤマアカガエル アカガエル科 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
ジムグリ ヘビ科 準絶滅危惧(NT)
ヒバカリ ナミヘビ科 準絶滅危惧(NT)
シロマダラ ヘビ科 準絶滅危惧(NT)
ヤマカガシ ヘビ科 準絶滅危惧(NT)
ニホンマムシ クサリヘビ科 準絶滅危惧(NT)
シュレーゲルアオガエル アオガエル科 準絶滅危惧(NT)
ニホンスッポン スッポン科 情報不足(DD)

参考文献

  • 1) 愛媛県貴重野生動植物検討委員会編(2003)愛媛県レッドデータブック―愛媛県の絶滅のおそれのある野生生物.447pp.愛媛県,愛媛.
  • 2)比婆科学教育振興会編(1996)広島県の両生・爬虫類.163pp.中国新聞社,広島.
  • 3)疋田努・鈴木大(2010)江戸本草書から推定される日本産クサガメの移入.爬虫両棲類学会会報,2010(1):41-46.
  • 4)環境庁編(1979)第2回自然環境保全基礎調査動物分布調査報告書(両生類・は虫類)全国版.137pp.環境庁,東京.
  • 5)環境庁編(1981)第2回自然環境保全基礎調査動物分布調査報告書(両生類・は虫類)全国版(その2).331pp.環境庁,東京.
  • 6) 環境庁編(1991)日本の絶滅のおそれのある野生生物 ― レッドデータブック脊椎動物編.331pp.日本野生生物研究センター,東京.
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  • 9)前田憲男・松井正文(1999)改訂版日本カエル図鑑.221pp.文一総合出版,東京.
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  • 26)佐藤井岐雄(1943)日本産有尾類総説.ⅱ+ⅲ+ⅹⅵ+520+l31pls.日本出版社,大阪.
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  • 28)千石正一編(1979)原色両生・爬虫類.206pp.家の光協会,東京.
  • 29)千石正一他編(1996)日本動物大百科 第5巻 両生類・爬虫類・軟骨魚類.189pp.平凡社,東京.
  • 30) 重信川ビオトープネットワーク研究会編(2000)泉~その未来にむけて.重信川ビオトープネットワーク調査報告書.135pp.(社)四国建設弘済会,香川.
  • 31)水産庁編(1998)日本の希少な野生水生生物に関するデータブック.437pp.(社)日本水産資源保護協会,東京.
  • 32)田辺真吾・岡山健仁(1990)愛媛県におけるオオダイガハラサンショウウオの新産地.南予生物,5(1・2):4.
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  • 35)八木繁一(1966)大久保の自然.愛媛自然科学教室,1-14.

用語解説

外鰓(がいさい) 鰓の一種。幼生の咽頭部付近から体外へ突出した、総状あるいは羽状の鰓。
吸盤(きゅうばん) 動物が他の動物又は他物に吸着するための盤状構造。
交尾(こうび) 爬虫類などの生殖方法。多くの場合、オスの生殖門には陰茎ないしそれに相当する交尾器が発達しており、それをメスの生殖器内に挿入する。
黒化(こっか) 黒色色素が多く、体の色が黒くなった個体。
耳腺(じせん) 目の後から鼓膜の後ろにある細長い隆起。ニホンヒキガエルやアカハライモリはここから毒を出す。
成体(せいたい) 成熟して生殖が可能になったもの。おとな。
総排泄腔(そうはいせつこう) 爬虫類や両生類の場合は、糞、尿、精子または卵が同じ穴から出る。
頭胴長(とうどうちょう) 吻端から肛板の後縁までの長さ(トカゲ・ヘビ類)または、吻端から総排泄腔前端までの長さ(両生類)をいう。
背中線(はいちゅうせん) 背中の中央部を前後に走る線模様。
孵化(ふか) オタマジャクシ(幼生)の発生が進行し、ゼリー層をやぶって外界に出ること。
変態(へんたい) 成体と同じ機能を持つようになること。両生類では鰓呼吸をする幼生(オタマジャクシ)から肺呼吸をするカエルやサンショウウオにかわること。
鳴嚢(めいのう) カエル類にみられる喉又は頬にある鳴き声を発するための空気袋。
幼生(ようせい) 両生類のオタマジャクシの時代。
幼体(ようたい) 変態後の未成熟の若い個体。子ども。
卵塊(らんかい) 一度に産み出された卵の塊。
卵嚢(らんのう) 卵包を包んでいる袋。ヒキガエル類やサンショウウオ類では左右一対である。

(執筆者:岡山 健仁)