経営者向け介護DXセミナー~思考法を変えれば、現場は変わる!明日から始める介護DX入門~
更新日:2026年1月31日

会場の様子
松山市では、従業者負担の軽減や業務の効率化に向けた介護DXを推し進め、これまで介護テクノロジー等の展示会、体験会やAIケアプランの実証実験を行っています。
今回、初めての試みとして、令和7年12月12日(金曜日)に経営者向けセミナーを企画しました。
講師
今村 貴志(いまむら たかし) 氏
社会福祉法人善光会
サンタフェ総合研究室研究員
株式会社善光総合研究所 介護ビジネスサポート部シニア・コンサルタント
池谷 隆弘(いけがや たかひろ) 氏
社会福祉法人善光会
サンタフェ総合研究室研究員
株式会社善光総合研究所 介護ビジネスサポート部
セミナー資料
アウトライン
1.変わる現場のために、まず「思考」を変える
セミナーは一方的な講義形式ではなく、個人での振り返り時間やグループディスカッションを2回取り入れた参加型形式で進行しました。本セミナーの主題は、 「介護現場の負担軽減と事務の効率化が期待できる介護テクノロジーの普及」です。深刻な人材不足が続く中で、 DXの本質は「高価な機械を導入すること」ではなく、「仕事のやり方そのものを再設計すること」 である点が、具体例を交えながら強調されました。
2.明日から実践できる「3つの思考転換スイッチ」
現場ですぐに活かせる考え方として、次の3つの「思考転換スイッチ」が紹介されました。
参加者からは、「考え方を変えるだけで、見直せる業務が多いと気づいた」といった声も聞かれました。
| スイッチ | 従来型の思考 | 思考転換後のスイッチ |
|---|---|---|
| (1) できない理由探しをやめる | 人がいないから無理 | 「少ない人数でもICTで質を落とさず行うには?」と問い直す |
| (2) 聖域をつくらない | 既存の手順に固執する | 法律・安全以外の手順はすべて見直してよい |
| (3) 属人化からの脱却 | 特定のベテランに依存 | 誰がやっても一定の質を保てる「標準化・再現性」を目指す |
3.AIを活用した現場の生産性向上デモ
本セミナーでは、介護現場の生産性向上を具体的にイメージできるよう、AIを活用したデモンストレーションと解説が行われました。
(1) 会議の議事録作成支援
業務改善の第一歩となる「会議の議事録作成」を、AIがどのように支援できるかについて、準備から実際の手順までを具体的に紹介しました。 会議後の記録作業時間を大幅に削減し、職員が本来の業務に集中する時間を生み出すヒントが示されました。
(2) ケアマネジャー業務の効率化
特に業務負担の大きいケアマネジャー業務について、ケアプラン作成をAIが補助する方法が紹介されました。 文書作成の負担を軽減することで、利用者との面談や、より個別性の高いケア検討に時間を充てられる可能性が示されました。
参加者からは、 「AIはまだ先の話だと思っていたが、身近な業務から活用できると分かった」 といった声も聞かれ、「AI活用への心理的ハードルを下げる機会となりました」との感想がありました。
4.効率化の先にある「より良いケア」へ
セミナーの最後には、効率化の真の目的は「人を減らすこと」ではなく、「利用者と向き合う時間を増やすこと」である点が強調されました。
効率化がもたらす価値として、次の3点が整理されました。
1. 標準化:基準が明確になり、公平な評価につながる
2. データ化:見えにくかった貢献が可視化され、職員の納得感とやりがいを高める
3. 時間創出:無駄が減り、本来のケアに集中できる
DXとは「人を変えること」ではなく、「仕組みを変えること」であり、 職員を未来を共につくるパートナーとして巻き込むことが重要である―― そのメッセージをもって、セミナーは締めくくられました。
参加者との質疑応答(Q&A)
| 質問 | 講師回答 | |
|---|---|---|
| 1 | ICT活用によって人員配置基準を満たしつつ、サービス水準を向上させるために、どのような取り組みを行ったのか。 | まずタイムスタディ(業務時間の計測・分析)を実施し、事実に基づいて業務を把握。その上で、まとめて行える業務を抽出し、業務を分散・再設計することで、少ない人員でも質の高い介護を提供できる体制を整えました。 |
| 2 | 今後AIを導入する際のポイントは何か。 | 全職員が一度にAIを学ぶのは難しいため、まずは「やってみたい人」から活用を始め、業務の仕組みをつくり、他の職員へ共有していくことが重要です。 また、情報漏洩対策に加え、AIによる回答は絶対ではなく最終的に人間が確認しなくてはならない点に注意が必要です。 |
| 3 | インカム(無線機)導入時に気をつけるべき点は。 | インカムを導入する「目的」を明確にし、動機づけを行うことが重要です。道具を入れるだけでは活用は進まないため、リーダーが率先して使用し、具体的な活用例を示す必要があります。 |
介護DXセミナーQ&A
【質問1】「誰がやってもできる仕組み(再現性)」の具体的な構築方法は?
再現性の構築とは、特定の職員の「経験」や「勘」を、組織の「資産」に変えるプロセスです。ポイントは、「人に頼る」のではなく、仕事のやり方を組織に残すことです。
ICTを入れる前に、まずやり方を揃える
新しいシステムを入れる前に、
「この場面では何を基準に判断しているのか」
「どこまで自分で決めてよいのか」
といった判断の基準を言葉にして整理します。マニュアルの置き場所を一つにする
「どこに書いてあるか分からない」を防ぐため、
スマホやタブレットから1か所見れば最新情報が分かる状態を作ります。動画マニュアルを活用する
身体介助や機器操作などは、文章よりも**短い動画(1分程度)**が効果的です。
経験の浅い職員や外国人職員でも、同じやり方をすぐに確認できます。
最初から完璧を目指さない
マニュアルは「6割くらい」で使い始め、
現場の声を反映しながら 少しずつ直していく方が、定着します。
【質問2】経営者が現場に丸投げの場合、どうやって意識を変えていくべきか?
「もっと関わってほしい」とお願いするだけでは、経営者は動きにくいものです。
大切なのは、経営者が判断しやすい材料を見せることです。
現場の状況を“見える化”する
経営者が現場を任せきりにしてしまう理由の一つは、
「何が起きているのか分からず不安」だからです。
ICTを使って、
・事故につながりそうな兆し
・稼働状況や人の動き
が分かるようになると、自然と関与が増えます。DXが職員定着やケアの質につながっていることを示す
「楽になるから」ではなく、
「利用者の落ち着きにつながった」
「職員の負担が減り、辞めにくくなった」
といった具体的な変化を伝えることが重要です。
制度対応を“経営目標”として位置づける
生産性向上推進体制加算などを、
「やらされ仕事」ではなく、
法人として取りに行く目標として整理することで、
経営者の意思決定がしやすくなります。
【質問3】業務改善ミーティングで意見を活発にするには?
意見が出ないのは、やる気がないからではありません。
多くの場合、
「言っても変わらない」
「否定されたらどうしよう」
という不安が原因です。
いきなり発言させない
まずは
「一人で書く → 3人くらいで話す → 全体で共有」
という流れにすると、話しやすくなります。出た意見には必ず返事をする
48時間以内に、
「採用する」「今はできない」「検討する」
を理由付きで伝えるだけで、
「言ってよかった」という実感が生まれます。
ワールドカフェ形式を取り入れる
堅い会議ではなく、
少人数で自由に話す時間を作ることで、
立場に関係なく意見が出やすくなります。
目的は「結論を出す」ことではなく、
課題を共有することです。
【質問4】DXで生み出した時間を、職員にどうアプローチするのが有効か?
「効率化=仕事が増える」と思われると、DXは進みません。
そのため、時間の使い道は経営が決めるという姿勢が重要です。
あらかじめ使い道を決めておく
浮いた時間を、
・振り返り
・カンファレンス
・研修
などに使うと明示します。利用者と向き合う時間を増やすためだと伝える
「記録が楽になった分、利用者と話す時間を増やしたい」
という目的をはっきりさせます。
働きやすさや処遇に還元する
残業が減る、休みが取りやすくなる、
加算取得を通じて給与に反映される、
といった 目に見える形で示すことが大切です。
【質問5】ICT・ロボット活用の参考事例と、収益改善への繋げ方は?
事例を見る際は、
「便利そうか」よりも
「自分の事業所で使えるか」「加算につながるか」
という視点が重要です。
参考URL:
愛媛県:介護分野における生産性向上について(外部サイト):モデル事業所における取組事例が掲載されています。
厚生労働省:介護現場の生産性向上(外部サイト):ガイドラインや最新の施策が確認できます。
テクノエイド協会(外部サイト) :介護ロボットの最新情報と導入効果が確認できます。
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