平成26年8月29日 消防団を中核とした地域防災力充実強化大会

更新日:2014年9月4日

 皆さん、こんにちは。松山市長の野志克仁です。よろしくお願い申し上げます。
 さて、松山市は四国では最大の人口51万人の中核市です。そして今年は、四国霊場八十八ヶ所が開創されて1,200年、瀬戸内海が国立公園に指定されて80周年、そして道後温泉本館が現在の姿に改築されて120周年の大還暦を迎えるという記念すべき年です。こういった折に、日本消防協会様主催の「消防団を中核とした地域防災力充実強化大会」で松山市の消防防災の強化策を御披露する機会を賜りましたことに、心から感謝を申し上げます。

 それでは、まずはじめに、松山市の取り組みの背景についてお話をさせていただきます。松山市と言えば、皆様のイメージとしては「道後温泉」、「松山城」であり、日本騎兵の父と言われる秋山好古や日本海海戦作戦参謀の秋山真之、俳句の正岡子規、そしてこれらの群像を描いた小説『坂の上の雲』ではないかと思います。
 松山は、この秋山好古や正岡子規など、傑出した武人や文人を輩出するような「人を鍛え育む」という土壌や、道後温泉のように「古いものを生活の中で大切にしながら後世に引き継ぐ」という文化が特徴であると考えています。
 また、四国八十八ヶ所霊場のうち、松山市内には四国内の市町村では最も多い46番札所から53番札所までの8ヶ寺があり、先人が残してくれたお遍路さんへのお接待、おもてなしの文化が根付く中で、思いやり、助け合いの心を大切にする風土も変わらず引き継がれています。

 こういった中で、消防団や地域防災の強化の必要性を感じたのは、まず消防団員の減少と、地域の衰退傾向でした。消防団は地域に根付き、防災や地域行事などあらゆる場面で活躍する主体であり、地域と密接な関係にあります。
 松山市は平成17年の2市1町の市町合併により、9つの離島と広範な山間部を擁することになり、そこで直面したのは高齢化と過疎化でした。まさに地域で活躍する消防団も、定年や移住により団員が日に日に減少していました。
 一方、市の中心部でも、また別の理由で消防力の維持に陰りが見られていました。その原因はよく言われる団員のサラリーマン化であり、団員の登録数は満たしていても、会社勤めの昼間には活動できない状態でした。
 これらは、地域の消防団がいくら努力しても、その解決策が見つからない問題であり、「地域の宝」である消防団を市民全体で支える環境作りが必要であると考えていました。
 そこで、地元松山の先人からいただいた「人を鍛え育む」ものとして、自主防災組織の結成促進と防災士を養成し、また、お遍路さんへのお接待文化である市民からの思いやりや助け合いの風土を消防団の支援に生かすことで、負担を軽減しながら、消防団と地域を相互に活性化したいと考えました。

 具体的に申し上げますと、まずその一つ目は、「まつやま、だん団プロジェクト」です。これは、消防団員を市民全体で支え応援することで、団員の使命感や充実感を醸成しながら、消防団員の家族にも誇りを持っていただく事業です。「だん・だん」は松山の方言で「ありがとう」という意味で、団員証に付けたIC機能で電車やバスの割引をはじめ、飲食店や理髪店で団員証を提示することで、家族も含めた利用料金の割引が受けられます。現在、この消防団を応援する事業所は220店舗あります。
 また、賛同いただいた飲料メーカーに、清涼飲料水の自動販売機に消防団をPRするラッピングをした「消防団応援自動販売機」を市内12ヶ所に設置していただき、その売り上げの一部を消防団の活動費として寄付していただくほか、消防団の会議や訓練で使う清涼飲料水も特別価格で提供していただいています。

 次に二つ目が、機能別消防団員の導入です。松山市の機能別消防団員の役割は、大規模災害時の後方支援と、昼間の活動が制限されるサラリーマン団員の活動支援です。
大規模災害時の後方支援人員の確保策として導入したのが郵便局職員と大学生で、郵便局職員は、地域に密着し地域事情に精通している特性を基に、情報収集や避難誘導を主な役割としています。
 また、大学生には、若さ、パワー、専攻学科能力などを避難所等の後方支援活動に活かしてもらうほか、大学卒業後も、消防職員や消防団員になる方もいますので、将来の消防防災を担う有能な人材の育成にも繋がります。
 次に、サラリーマン団員の補完として事業所消防団員を導入しました。団員のサラリーマン化率が高い市街地や、高齢化率や過疎化率の高い島嶼部では、日中の活動人員が確保できないことから、管内の事業所に御協力をいただき、日中に限定して活動していただいています。

 三つ目は、女性消防団員です。消防団と言えば、男性が多いイメージがありますが、女性の視点、生活者の視点、きめ細かい対応で、応急救命処置の普及や広報活動、さらに避難所の運営なども行っていただくことにしています。
 現在、女性消防団員は、機能別消防団員を合わせると192名となり、昨年は、救急指導や防火防災指導などを150回以上行っていただきました。

 このほか、消防団協力事業所表示制度の活用をはじめ、定年制の延長や市域外勤務者の入団資格を見直すなど、誰でも、いつでも入団でき、そして活動しやすい環境の整備に努めています。
 この様な取り組みにより、消防団員数は平成17年1月の市町村合併時と比べ、条例定数で200名増の2,501名となり、実員数も268名増の2,418名となり、地域防災の様々な場面で御活躍いただいています。

 さて私は、市民の声を市政に生かすため市内の各地域へ足を運ぶタウンミーティングを就任当初から重ねてきました。この中で、東日本大震災以降は震災に対する不安の声も多く、これまで以上に市民に防災意識を根付かせる必要があると考えました。そこで、市域のどこでも海からの高さを確認できる標高マップシステムを開発公開し、津波の関心が高い海岸部で実施した市の総合防災訓練では、約18万端末と言われる松山市民の携帯電話やスマートフォンに緊急速報メールを配信するなど、市民一人一人の防災意識を高める工夫をしてまいりました。
 おかげさまで、一昨年自主防災組織の結成率も100%になり、これらの組織が連携できるよう自主防災組織ネットワーク会議を発足し、昨年は2千人を超える防災士の企画や参画のもと、合計約1,800回、実に4万8千人が訓練や研修会に参加していただいたことで、市民防災意識の高まりを感じています。

 こういった中で、昨年末には日本消防協会様の御尽力のもと、まさに時節を得た「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が制定されました。この法律は一つには、長きにわたり地域住民を守ってきた、かけがえのない地域の宝である消防団を見直し、バックアップし、強化することです。そして、もう一つはこの消防団とともに、全国各地で整備の進む自主防災組織が相互に連携することで、人知を超える災害から国民を保護するものであると考えています。

 今後は、これら法律の趣旨を踏まえ、充実した装備のもと、鍛えられ強化された消防団が、これまで以上に地域や企業に根付き、参画し、連携し、また、地域の安全を担え得る確かな存在として、末永く活動できる体制を構築したいと考えています。さっそくこの9月初旬にも、自主防災組織と、市内に多くの支店などを有する企業、そして消防団を管理する松山市の三者が、普段から防災に関する情報交換や人的な交流を深め、いざという時に、お互い顔の見える関係で地域の共助を進めるための三者協定を締結することにしています。

 結びに、「継続は力、防災対策に終わりなし」です。首都直下地震や南海トラフ巨大地震は私たちの眼の前にあり、避けることはできません。そうした事態に備え、引き続き、消防団を中核とする「松山市型の地域防災力の充実強化」を一層進め、「一人でも多くの人を笑顔に 全国に誇れる、わがまち松山」から、全国に「安全と安心」を発信してまいりたいと考えています。
 最後にもう一つ、私からお願いがあります。是非とも皆様方が、日本最古の湯と言われている道後温泉と、「行ってよかった!日本の城ランキング 全国第2位」の松山城がある「おもてなし日本一のまち 松山」にお越しいただくことを切にお願い申し上げ、私の発表の締め括りとさせていただきます。御清聴、誠にありがとうございました。

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