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09 書道家 白晃
筆との出会いを作ることが私の役割なのかなと思っています
砥部町出身、松山市在住の書道家。8歳で書を始め23年間習った後「筆文字屋」として活動を開始。個展などを開催するかたわら、書道を抵抗なく楽しんでもらえるような「アート書道ワークショップ」を開催し、手書きであることの魅力や、世界に一つのオリジナリティを提案している。書道家としての名前である「白晃」とは「白い日の光」の意。
筆文字屋 白晃
愛媛県松山市来住町160-5
□ TEL 089-975-1257
□ URL http://www.fudemojiya-hakko.com
□ 業務内容 インテリア書、命名書、表札、ロゴなど筆文字
Q 書への入り口や、仕事にしたいと思われた経緯は?

8歳の時から近所で書道を習っていたんです。父の勧めで始めて、何の疑問もなく3 0歳まで通っていました。当然3 0歳になるまでの間に、受験があり、就職がありと、環境や状況自体に変化はありましたが、その教室にはずっと通っていましたね。それで私が30歳になった時に、先生が怪我をされて教室を閉めることになったんです。先生の教室がなくなって、全然書をしなくなって、その後私は結婚しました。それから1人目の子どもを出産して、育児に追われて、夫や家族に助けを求められないほどに必死だった頃がありました。
そんな時、ふと書の道具を引っ張り出して書いてみたんです。そうしたら自分でも驚くほど、楽しかったんです。その時に「ああ、私書くのが好きだったんだ」と思いました。2~3年ぶりくらいのものだったんですが、書いた時にふと涙が出たりして。その時に初めて自分が書く事に楽しさを感じているということに気づいたんですね。それで、将来的に「何か仕事にできたらな」とか「おばあちゃんになったら書の先生になれたらな」と感じるようになりましたね。

Q そこから「筆文字」を仕事にされるようになるまでには何があったのでしょう?

ある時、主人の知人がお店を作るという時に「奥さん書道してたのなら、お店で使う筆の文字を書いてみる?」って言われたんです。それで、実際に書いてみて、書いたものがお店のロゴになって、お金をいただきました。それが初めて自分の書が仕事になった時でした。そうやって、依頼されたお客様がまた別の方を紹介してくださったり、実際にどこかで私の文字を目にした方から受注することが増え、「筆文字デザイン」をメインにした仕事ができていきました。また、別の友人から「せっかくそんなに長い間書道してたんだから、ちょっとしたお教室をやってみない?」と誘ってもらったんです。それで「楽しんで筆を持ってもらうこと」を目的にした教室をしてみたいと思い、自分で試行錯誤しながら「こんな教室はどう?」という形で提案したんです。それを月1回ほどやらせてもらうようになったのが、教室のきっかけです。自分が子育てで大変だったし、妻とか母とか、そういう肩書きというか役職なしに、○○ちゃんとか○○さんっていう個人として大人が集まる場所を作れたらいいなというのが、教室を始めたときの想いでした。
先にお話したように、書くことの楽しさに目覚めてから「いつか仕事になれば」という思いはありましたが、実際にそうなっていったのは偶然の積み重ねと、周りの協力があったからだと思います。

Q 「筆文字屋」としての主なお仕事内容は?

ロゴなどの「筆文字デザイン」と、表札やインテリア書などの受注制作に加え、教室と、自分の作品や個展の四本柱です。受注の制作は企業・店舗用デザインやオリジナル表札など、シーンに合わせて、筆文字でデザインします。基本的に筆文字デザインを作る時には、まず依頼主に会わせてもらいます。大まかな方向性を決めた後、その方自身の雰囲気を見たり、好きそうなものを探りながら、何パターンか作ります。例えば、床の間に書を飾りたいから「家の部屋見てみて書いてくれんか?」という依頼もあったりします。現場を一度見させて頂いてから書かせてもらうことも多いんですよ。
その他の教室やワークショップは、出張という形の場合が多いですね。書道を抵抗なく楽しんでもらえるようにしたいと思っているので、生徒さんが使う道具も全部こちらで持っていくんです。来てくれる人ができるだけ来やすいようにと思っていますね。
先に言った三つの仕事は、お客さんに寄り添ってする仕事ですが、四つ目の作品作りや個展は、自分を出せるところかなと思います。1人で個展をする時には40~50くらいの新しい作品が必要になるので、本当に節目の時にできたらいいかな…という感じではありますが。ただこれは、家族の協力があってできることなので、その分家族に感謝しながらやってます。制作の間は集中力が必要ですし、パワーも使いますから。たくさんはできないけれど、伝えられる部分は伝えながら続けていきたいと思います。

Q 「筆文字」と「書」は違うんでしょうか?

そうですね。私が習っていたのは、本当に一般的な書道です。言葉を表すための「文字」に、自分の感情やインスピレーションを乗せて表現することができるのが「筆文字」や「アート書道」だと私は思っています。教室での筆文字も、「自分で楽しく書ける方法」を見つけてもらえたらいいなと思ったんです。書の基本は全然知らなくても、家でいる時とか、ちょっとお手紙を書く時とかに、筆を持ってほしい。なら、「筆をもって緊張しない方法は何かないかな」って考えたのがきっかけなんです。
だから私今は、書界とは何の繋がりもないんです。生徒さんに「ちゃんとした字を書く先生を紹介して」って言われることもあるんですが、なかなか紹介してあげ辛いんですよね(笑)。ただ、今の私の役割はコレかなと思っています。もちろん「どう思われてるんだろう」と考えた時期もありましたが、「筆を全く使わんよりはええやん」って思ったんです。一生の中で、全く知らずに終わるよりは、ちょっと書いたことある…といったきっかけを誰かに作っておくことで、たとえばその人が書の展覧会に足を運んだりするかもしれませんよね。そういった意味で、筆との出会いを作ることが私の役割なのかなと思ってます。ですから、正統な書のイメージとは違った括りだと思ってもらえるとありがたいですね。

Q 白晃さんのような活動をされてる方は他にもいらっしゃるんですか?

私自身は聞いたことはないですね。でも、同業者に会ってはみたいです。今は横の繋がりがないので、ちょっと寂しいと思う気持ちもあります。それが例えば全く同じ仕事ではなくても、私のように細々とでもモノを作ってる人たちが、集まって話してみたいですね。私たちもこういった冊子を見て、ああこの人会ってみたいな、お話してみたいなとは思うけど、会いに行くことはできないじゃないですか。ビジネスマッチングももちろんしたいけど、まずは「知る」を含めて「会う」とか「話す」というのはとっても大事なんじゃないかなと。モノづくりをしている人たちが同じテンションで話せることと、お互いに「ああ、いろんなことしてる人いるんだな」という実感を持つことが大切だと思うんですよね。

Q これからチャレンジしたいことは?

もともと「筆文字屋」という名前をつけたのは、筆というものでできる事をなんでもやってみようという気持ちだったので、依頼があればなんでもチャレンジしていきたいと思ってます。もちろん、それでみんなが楽しくなれるようなもの。繋がりが出来たりとか、集まって笑い合えたりとか、時間を忘れられたりとか、そういう時間を書を通して作れたらなと思います。以前は「書」の教室を介した婚活もやったことがあるんですよ(笑)。ネットとかメディアが溢れてる今だからこそ、手文字を通すことでその人が伝えたい気持ちをより視覚的に伝えられるんじゃないかなと思ってます。
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