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06 CGアニメーション ライティングディレクター 波田琢也
大切なのは、世界に認められる作品を作り続けていく環境を構築すること
マーザ・アニメーションプラネット株式会社でライティング・コンポジティング スーパーバイザーを務める。日本のCGアニメーション技術を牽引する若きクリエイター。松山工業高校電子機械科を卒業後、CGプロダクションに勤務。製作現場に応じた高い技術を積み上げ、近年では映画『キャプテンハーロック』に携わり、世界各国から高い評価を得ている。
マーザ・アニメーションプラネット株式会社
東京都品川区東品川2-2-20 天王洲郵船ビル18F
□ TEL 03-6381-0555
□ URL http://www.marza.com
□ 業務内容 フルCG長編アニメーションの企画、
製作、販売、著作権事業
Q 波田さんの仕事内容を教えて頂けますか?

一言で言うと、CGアニメーションの制作です。一番新しく代表的なものは、映画「キャプテンハーロック」ですね。この映画はフルCGで、よりリアルさを求めて作っています。僕たちがやっている3Dはより実写に近いもので、実際にカメラを持って撮影しますし、2Dに比べてカメラワークも格段に多いです。実写でのセットやキャラクターが全部CGに代わっただけだと思ってもらえるとわかりやすいかもしれません。僕はその撮影やライティング、複数の映像素材を合わせて一つにしていく行程などを担当しています。以前は、同じくCG映像を用いたCMやゲームムービーなども作っていました。それらが映画を作るための布石となり、今回やっと映画ができました。会社の立ち上げから7年になりますが、それまでに積み上げたものがやっと花開いたという感じですね。

Q 技術面を徐々に高めたことで実現したのですね。

そうですね。チャレンジを続けてきた結果です。また、技術面以外のチャレンジとして、この「キャプテンハーロック」のプロジェクトで僕は土・日曜は全員休み、祝・祭日も休み、月の平均作業時間は200時間以内に収めたんです。そういった健全な環境で、かつ予算もオーバーしないような職場を作ろうという試みでした。というのも、日本だと、どうしても努力や精神論というのが重要視されがちですが、ハリウッドで良い事とされているのは、「すごくいいシステムを構築した上で、いい映像を作る」という事なんです。現に国内のCGの制作現場というのは「徹夜が多い」っていうイメージがありますよね。僕はそういったイメージを払拭したいと思っています。
今後この業界・職種に興味をもった若者に、大変じゃないよと伝えたい。だからテクノロジーも含めて、映像というものを、ちゃんと分解して、学問や技術としてみんなで共有することをやっています。この規模で、この予算で、この期間で、これだけのクオリティを実現できたというのは、業界でもかなりインパクトのある取り組みだったと思います。海外からの評価が非常に高いのも、ここに理由があります。

Q 波田さん自身は、どのような経緯でこのお仕事に就かれたんですか?

高校時代に「映画を作りたい」と思い、運良く東京にツテがあったので、そこで研修を受けさせてもらったんです。そこから成り上がったと思ってください(笑)。一番初めにCGプロダクションに入り、そこでテレビやCMの仕事を、それこそ徹夜徹夜徹夜…という感じで1年間やりました。そこから始まり、運良く「スクウェア(現・株式会社スクウェア・エニックス)」に入社し、そこでまた運良く結果が出て、同社のハワイスタジオである「スクウェアUSA」に行かせてもらうことになるんです。ちょうどその頃ハワイで映画を作っていて、ファイナルファンタジーの映画や、マトリックスの映像などを作らせてもらう事になりました。今の仕事というのは、実はここが大元になっているんです。それから日本に帰ってきてしばらく「スクウェア」に在籍するんですが、その頃の作品がすごくコアなターゲットに向けたものだったので、「もう少しファミリー向けだったり、いろんな人に見てもらえるような映像を作りたい」という気持ちがあって。それでこの「MARZA」という部署、当時は「株式会社セガ」のCG映像制作を行う部門を立ち上げる時にメンバーが集まってきました。もちろん「スクウェア」時代の環境とは、予算規模も文化も違っていましたが、映像からさらにその先のものを作りたいという気持ちをもって取組み、今に至ります。

Q ターニングポイントになったのは、ハワイに行った事ですか?

そうですね。「スクウェアUSA」には本当に優秀な人がたくさんいましたので、やはり「本物を知る」というか、レベルの高い仕事を身近に感じられました。その頃、僕はまだ21~22歳でしたから、他の人よりも早く、本当に素晴らしい方々と一緒に仕事ができたわけです。がむしゃらに学べたし、若いぶん期待もしてくれました。現場での勉強という点でも、僕はここで揉まれたと言ってもいいと思います。本当にハワイでの2年半は良い時間でした。
それにあの頃は寝る間も惜しんで、毎日遊びに行っていましたね。もちろん仕事はちゃんとやっていましたが、それぐらいアグレッシブに動くことで友達もたくさんできたし、モチベーションを高く保つことができました。そこからいろんなツテができましたし、例えば今でも技術面で迷ったりすると、彼らからコンサルティングを受けることができるんです。「こういう時ってどうしてる?」って。具体的な技術の情報を、直接教えてもらえるわけです。ハワイで一緒に働いていた人の中には、ピクサーに行った人もいるし、ドリームワークスに行った人もいるし、ディズニーにいった人もいる。世界の最先端で活躍している人たちの情報を聞けるっていうのは非常に大きいですね。あの頃たくさんの人とコミュニケーションをとれたことで、自分の幅がすごく広がりました。

Q 技術と同じように、コミュニケーションも映画を作る上で重要なのですね。

そう思います。映画は一人で作るものじゃなくてチームワークが大切ですし、総合芸術ですから。僕たちが今一番に掲げているのは「ストーリー」ですが、これにもアーティスト同士の繋がりが関係します。ストーリーが繋がってないといけないということは、僕たちスタッフも繋がってないといけないんです。だからもし当人同士で繋がることが難しければ、その関係を会社が取り持っていけるような仕組みを作っています。最新の映画についてみんなでディスカッションをしたり、月に一度立食のパーティをしながら各々が今作っている作品を上映したり。そうすると各チームが何をやってるのかを知る事もできるし、その人の人間性を知っていれば、そこまで考えたアドバイスができるんです。優秀な人材を集めて新しい技術を取り入れること、健全な環境を作ること、そしてスタッフ同士がコミュニケーションをとりチームワークを強化することは、良い作品を作っていくことにも、新しい才能を育てていくことにも直結していると思います。それらに取り組むことで日本発信の作品が世界で認められ、さらにそれをちゃんと作り続けていく環境を構築することができれば、単純に「MARZA」だけのことではなく、日本の映画産業を底上げできると思っています。

Q ハワイのように、愛媛でこのお仕事をするという可能性はありますか?

まだまだ難しいと思います。仮に10年後や20年後に、IT技術やクラウドなどを使ってハード面では実現可能な時代が来るかもしれません。ですがやはり先にお話した通り、映画を制作する上では人が何より大切です。今の映画の作り方は、100人以上の人間が必要なんです。これがもし10人くらいの規模だったら話は変わってきますが、100人規模で、しかも数年かかる。さらに海外からも優秀な人材を呼ぶとなれば交通の利便性も必要になってきますので。ただそれ以外は、松山は非常にいいところですよね。生活するにしても、食べ物や通勤の事にしても。だからいつかはそういった地方都市にひとつスタジオがあるといいんじゃないかなと思います。本気でいいものを作っていく上では、自然の多さとか人の温かみとか、そういった感覚は大切です。

Q 現実に近づけるために、今できるのはどんな事だと思いますか?

まず「種を蒔く」ことが必要かもしれません。優秀な人たちを学校に講師として呼んで、学生さんに「本物を知る」という機会を作るんです。それこそアメリカの映画学校というのは、卒業生にスピルバーグがいて、彼らが実際に学校に来て講演をするんです。すごく刺激になりますよね。そういった意味で、松山の学校でも、経験者が来て教えてくれるという刺激があれば良いと思います。また、僕が以前に参加した「東京在住の四国出身者を集めてみんなで遊ぶ」というイベントでは、僕自身「四国出身の人で、こんなに優秀な人がたくさんいるんだ」って思ったんです。同じように、松山にあるたくさんの能力を掘り出し、発信するというのも大切ですよね。そうすることで「松山は面白い人がたくさんいる」というイメージが根付けば、新たな変化が生まれるのではないでしょうか。
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