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クリエイター×企業愛媛のミカン産業を次世代につなぐ
Image 株式会社エイトワンとupsetters architects が手がける店舗「10FACTORY」では、オリジナルブランドの提案、店舗の運営、みかんの木パートナー制度などを展開。
愛媛のミカン産業を次世代につないでいくことを大きな目標としている。ブランドづくりや考え方の道筋など、ミカン産業を継続するための仕掛けづくりの背景をインタビュー。
岡部修三
upsetters architects主宰。「新しい時代のための環境」を目指して、建築、インテリア、イベントなど、都市のアクティビティに関わること全般をデザイン対象として、分野を横断して活動を続ける。JCDデザイン賞金賞、グッドデザイン賞など受賞歴多数。愛媛県砥部町出身、東京都在住。

村上雄二
株式会社エイトワン取締役常務。「道後夢蔵」「道後やや」のホテル・旅館事業のほか、今治タオルに特化した「伊織」、良質な愛媛県産品を提供するショップ「ehimesm」などを展開。岡部氏とともに愛媛の柑橘類を使用した贈答品や飲食メニューを提供する店舗「10FACTORY」を2013年1月、立ち上げる。
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意義や存在価値を探り出して伝えるQ お二方の出会いは?

岡部 : 松山中心市街地の活性化を考え、仲間と立ち上げた「MATSUYAMAまちサーベイ」(http://mmsurvey.jp)の初回のトークイベント(2010年)に来ていた時に村上さんに声をかけて頂き名刺交換をしました。それが初めての出会いかな。

村上 : そうですね。当時は道後を中心にホテル事業をやっていて、道後以外の事業展開を模索していた時期だったので、市内で魅力的なイベントをやってるな~と顔を出したんです。
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岡部 : お会いする以前から、エイトワンさんが道後で運営されているホテルの評判などはよく聞いていました。村上さんや社長の大藪さんとは同年代ということを聞いていたので興味がありましたし、自然にお会いすることがあればいいなと思っていたところでした。
Q 少し話が戻りますが、東京や国外でご活躍されていた岡部さんが愛媛で仕事をされるようになったきっかけはなんでしょう。

岡部 : 会社を始めた初期は海外の仕事が多かったし、自分の周りでもオランダを中心に海外で大きな仕事をするという風潮があったんです。自分もそんな風にやろうと思ってやってみたんですが、できたら意外とむなしいというか、あまり意味がないというか…。突然海外に行って何か物を作ることの強引さみたいなものを感じるようになったんです。やっぱりちゃんと自分のゆかりのあるところでやった方が気持ちも入るんだろうな、と思いはじめたのが根本的なきっかけです。その後、震災があってよりそういう気持ちも強くなっていきました。

村上 : 岡部さんは僕よりも若いんですが、本当にいろんな経験をされています。僕たちが出会ったのは、ちょうど岡部さんが仕事に対しての考え方が変化してきた頃。「本当にやりたいこと」と「やるべきこと」だけをやろうと思っていたタイミングでした。その想いと僕たちの想いが良いタイミングでマッチした、という形ですね。
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Q どのように話が進んでいったんですか。

村上 : 漠然と「何かやりたいね」だったのですが、その当時、エイトワンは今治タオルを勢力的に展開していた時期だったので、愛媛の産業に関わることをやりたいね、と話が進みました。僕たちの事業のスタートはホテル業なので、いろんなニーズを現場から聞く事ができたと思います。観光客を招き入れますので、ホテルの食事の部分でもできるだけ愛媛を感じてもらいたい。そういうことから愛媛産のものを多く取り扱うんですが、いろんな農家さんと出会っていくなかで、一番感じたのが高齢化や後継者不足、手をかけて作っても適正価格で売れないなどの問題でした。思っていた以上に深刻な現状を目の当たりにするなかで、このミカン産業を継続するために何かできないか。そういう部分を岡部さんに相談しました。

岡部 : 愛媛と言ったらミカンだと思うのですが、意外とあまり良く知らない。ということで、まずはリサーチを始めました。その時にはどんな展開になるか決まっていなかったと思いますが、ある程度愛媛のミカンについて理解ができてきたところで、まずは農家さんに会ってみようということになりました。で、さっき村上さんの話にもありましたが、既にいろんな農家さんとの信頼関係ができていたので、思いのほかスムーズに事が運びました。普通はそこでいきなり農家さんに話をもっていっても門前払いなんじゃないかなと思うんですよ。だから「これは大丈夫だ」と思いましたね。

村上 : 特に若い農家さんなど、事業に対して共感してくれる人がいたというのは大きいですよね。

Q 実際に農家さんを回られてどうでしたか。

岡部 : 後継者不足もそうなんですが、先ほどの話にもありましたが、そもそもミカンのことを僕自身も全然知らなかったんです。そのくらい「ちゃんと語られていない」と言うことを痛感しましたね。地元の特産であるにも関わらずほとんど語られていない。あとはこれはミカンに限らずだと思うんですが、農家さんは、日々のことをまじめにやっているにも関わらず、知らず知らずのうちに危機的状況に陥ってしまっている人がかなりいる。
一方、そういったゆがみみたいなものに気がついて、いろんな工夫を試している新しい人もポツポツいて、そういう部分ではちょうど産業の変化の境目にあるんじゃないかなと思いました。

Q 次の事業を「ミカンでいこう」と決めた決定的理由は?

岡部 : 「これでビジネス的に絶対いける!」というのではなくって、エイトワンさんの事業全体に言えることかもしれませんが、プロセスが善であればビジネス的にもうまくいく、という根底的な理念があって(もちろん実際やらないとどうかは分からないけれど)、自分もそう思うんです。
そのために越えなければならないハードルはたくさんあるんですが、それを感じて始まったということと、実際にどこもやっていない事業ということでビジネス的にもチャンスはあるのかなと思っています。

村上 : まずは「やる意味があるか」という部分が先頭にあって、「事業としてうまくいくか」というのは正直後回しでした。優先順位としては、この店を作ってミカン産業が盛り上がることで愛媛にそれが循環していい流れ ができるということですね。

岡部 : 同時に、10FACTORYは1店舗ではまず無理だろうなというのは、今までの経験上直感的に分かっていました。きちんとしたプロダクトを作って、いろんなところに卸していくということが不可欠です。そうすることでプロジェクトが広がり、いろんな可能性に繋がっていく。そういったプロジェクトの意義とビジネスの接点を探していく...という感じですね。

村上 : そこは正直、不得意な部分なんですが最初から「大丈夫です、できます」と言ってくださっていたので、安心してお任せできました。今まで積み上げてこられた感覚で、サポートしていただくというか、それがないと踏み出せなかった事業だと思います。
Q お店の内装やパッケージなど、デザインの決め方の基準は?

岡部 : 基本的には、「この事業の意義を一番きちんと伝える方法はどこにあるのか」ということを探り、作っていくことに尽きます。

Q ターゲットはどのあたりに設定したのですか?

岡部 : 一番はやはり、観光客を含めて「外から来た人たち」だと思います。そこから、地元の人が贈答用として使ってくれるということを想定しています。

Q 実際には?

村上 : ほぼ想定通りですね。値段の部分ではビックリされる方も多いですが、きちんと説明をすると納得いただけますね。やっぱり思うのはちゃんと伝えることができるかどうかだと思うんです。今まではそこがなかったし、やり方がわからなかった。
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Q デザイナーと言うと、「見た目を整えてくれる人」というイメージですが、岡部さんは考え方の道筋や、成り立ちというところから関わっていますよね。

岡部 : 世の中全体の流れとして、そういう風にしなくちゃいけないことにみんな気づきはじめていますね。これはデザインに限らずですが、なんとなく「自分は何者なのか」というのを考えていくタイミングなのかなと思います。僕の中では建築家は本来そういう仕事だと思っていて、建築家としての一番の職能は「色んな物事を0から構築していく思考」にあると思うんですよね。そういった事を実際に言っている同年代の人たちもたくさんいて、深め方は様々なんですが、本来はそういうものだと思うんです。
そもそも建築の教育って、前提を疑う教育を受けるんですね。そしてそこから何を作るべきかを考える。古くは、そういう能力と例えば宗教とかが結びついて、教会ができたり。まずみんなが集まる場所が必要という自然な前提があって、それを形にしていく。建築家ってそういう職業だったんだと思うんです。それがいつの間にか作品としての優劣の競い合いになっていったり、職人的な技の競い合いになったり。そういう人ももちろん必要なのですが、自分の興味のある建築はそこではなく、何を作るべきかを深めていくことにありました。

Q やはり前提を知るところから仕事にとりかかるんでしょうか?

岡部 : 僕はリサーチを徹底的にしないと、物が作れないタイプだと思います。例えば何かお題を出してもらって「じゃあ自由にこれを描いて」と言われても、何を描いていいかわからない。相手があって、取り巻く状況を把握して、どうやれば良くなるかと考える方が向いていると思います。あと、商品を作るのであれば、売れないと意味がないので、市場のリサーチは不可欠ですね。

Q 「ゆかりのある地」で仕事をするメリットはどんな部分で感じましたか?

岡部 : これは先ほど言ったことと矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、やっぱりリサーチではわからないこともあるんです。というのも、リサーチというのはある程度客観的に、そして網羅的に広げていって、そこから答えを出していくようなやり方をするんですけど、そこに引っかからないような、微妙な場所の空気感とか、プロジェクトを進めていく上での人の性質とか。地元だとそれが肌でわかりやすい。あとはやっぱり同じ土地出身という部分から生まれる人との関係とか。言葉にするのが難しいんですが、「じゃあなぜそれを君がやるの?」という部分に理由があるような気がするんですよね。
海外での仕事に立ち会っていて最近思うんですが、プレゼンを聞いた時には「うん、なるほどね」ってなるんだけど、実際にその場所に行ってみると、建物や場所にあまり人の顔が見えないというか…。「理論的には合ってるけど、何かが間違ってる…」という事が結構あって。たぶん、そういうことって世界中でいっぱいあると思うんですよね。

Q これからの展開は?

村上 : 見えてきた問題点を解決していくために加工工場を借りて、長い目で見て、時間がかかっても自分たちでやれることからやっていこうかなと思っています。もっとミカンを美味しく食べる方法だったり、とにかく美味しいジュースを提供できる方法を自分たちも学びながら、お客さんにも伝えていきたいです。今年は都内出店を予定しているので、より多くの人に愛媛のミカンの美味しさを知ってほしいと思います。
SHOP DATA
10FACTORY 松山本店
愛媛県松山市大街道3-2-25
□ TEL 089-968-2031
□ FAX 089-968-2032
□ URL http://10-mikan.com/
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