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11 グラフィックデザイナー 藤原 貴
仕事をする上で、お客様との距離感は一番重要な問題。やっぱり直接会って同じ空気を吸うことが大切です。
今治市出身、松山市在住のグラフィックデザイナー。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科を卒業後、松山市内の制作会社に入社し、広告・ポスター・雑誌等のデザイン・制作を手掛ける。平成12年に独立、「藤原貴デザイン事務所」設立し現在に至る。「マツヤマワンコインアートプロジェクト」のクリエイターとしても活動中。
藤原貴デザイン事務所
愛媛県松山市鹿峰166-28
□ MAIL taka65@aurora.ocn.ne.jp
Q まずは、グラフィックデザイナーである藤原様のお仕事についてお聞かせいただけますか?
 印刷物になるものはなんでもデザインします。最近は主にパンフレット・カタログなど、いわゆるページモノのデザインが多いですね。あとは広告・ポスターなどのデザインも行っています。やはり松山のような小さなマーケットでは得意な分野の仕事ばかりを受注するというわけにもいきませんから、いただける仕事はとりあえずなんでもやっています。
 少し話がそれますが、なんでもやるって地方のデザイナーの特徴だと思いますね。東京のような都会だと、広告代理店と取引されているデザイナーは広告のデザインを、出版社や印刷会社と取引されているデザイナーはパンフレットや出版物のデザインを、と仕事のジャンルが決まってしまいます。デザイナー以外でもカメラマンなら、風景や人物、あるいは建築物というように、本当はそれぞれ得意な分野やスタイルがあるし、イラストレータはそれぞれがオリジナルのタッチや技法を、というようにそれぞれのスタイルで仕事をされていると思いますが、松山だとそればっかりじゃ仕事が足りない。ある程度幅広く器用にこなさないと地方で仕事をすることは難しいような気がしますね。いろいろなジャンルの仕事ができる楽しさもあるのですが、その反面、なにをやっても中途半端なレベルの器用貧乏デザイナーになってしまう危険もあると思います。

Q 今のお仕事をされようと思ったきっかけはありますか?
 美術大学への進学を目指したのがきっかけです。最初は漠然と美術やデザインの勉強がしたいと思って高校2年生の時に美大進学を志しました。当時、美術はそこそこ得意ではあったのですが、それよりも映像にかなり興味がありました。テレビコマーシャルや映画を見て「すごいなあ」、「ああ、こういうのを作りたいなあ」と、田舎の夢見る少年だった私は、アメリカの映像制作会社で映像クリエイターを、なんて夢想していたことを憶えています。
 高校卒業後東京の美術大学に進学したのですが、東京に行くとそれまでの田舎の生活と大きく異なり、日々の生活の中にとても身近にデザインを感じるようになりました。とにかくいいデザインが街にあふれていて、いかにデザインが人々の生活に影響を与えているのかを実感し、そしてデザインが生活に密着していることに驚きました。こんな仕事に関わって暮らしていけたら最高なんじゃないか、と思いましたね。卒業後に両親のいる愛媛に帰ることになったのですが、愛媛でデザインをするならグラフィックデザインしかないと考え、松山市内の制作会社に就職しました。それ以来、広告・ポスター・パンフレット・雑誌などのデザインに携わりつつ、現在も自分の道を模索している最中です。

Q 現在は藤原貴デザイン事務所として独立されていますが、独立されようと思ったきっかけはありますか?
 実はよく分からないのですが(笑)、当時の自分を振り返って考えると、一人のプロのデザイナーとして雇われている自分と、組織の一員として自分を雇っている会社との「意識のズレ」を感じたからではないでしょうか。その制作会社には12年余りお世話になったのですが、長く働いているとどうしても自分の価値観と会社のそれにズレが生まれてしまい、お互いにそれを埋めようと努力をするのですが、最後には会社からの要求に上手く応えられなくなり、やむなく退職を決めたような気がします。ただ、私自身さほど独立志向が強かったわけではなく、どうしても会社を辞めたいという気持ちはありませんでした。会社にいれば生活も安定しますし、規模の大きい仕事は一人ではなかなかできないし、なにより組織にいる方が大きな仕事に巡り会うチャンスは多いと思います。

Q 今のお仕事はどのような流れで引き受けられているのですか?
 現在、ほとんどは松山市内のお客様からいただいています。最初はどなたかのご紹介で仕事をいただいて、引き続きお取引いただくというケースが多いですね。ありがたいことにお客様から他のお客様を紹介していただくこともあります。独立当初は東京や県外の仕事をする機会もあったのですが、距離的な問題が大きくなかなかお客様の要望にお応えできないケースもあったので、現在は松山市内のお客様を中心におつきあいをさせていただいています。ただ、距離的な問題は近い将来IT技術が解決すると思っていて、現在でも簡単な仕事であればメールやスカイプで完結することもあります。「もはや世界中どこにいても仕事はできる」なんていう人もいますが、全ての問題をIT技術だけで埋めることはまだまだ難しいと思っています。やはり仕事の基本は顔と顔を合わせて同じ空気を吸うところから始まります。細かいイメージを伝えるためには直にお客様とお会いしてコミュニケーションをとることが一番大切ですね。
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藤原貴さん
Q 現在、藤原様は「マツヤマワンコインアートプロジェクト」にも参加されていますよね?

※マツヤマワンコインアートプロジェクト
 松山在住のデザイナー、カメラマン、コピーライター等の10人のクリエイターにより、平成22年1月1日にスタートしたプロジェクト。松山の情景を、デザイナーはビジュアルに、カメラマンは写真に、コピーライターは言葉にというように、各クリエイターの得意技を使って、ワンコインで買える松山の情景を描いたポストカードを制作している。
 (マツヤマワンコインアートプロジェクトHPより)

 私はデザイナーとして参加しています。プロジェクトでは「作りたいモノを好きなように作る」ことが基本なのですが、実際にやってみてこれがとても難しいことに気づかされました。普段、制約なく好きなようにモノを作ることに飢えていると思っていたはずが、制約がない中でモノを作ること、デザインすることの難しさに直面し、非常に悩まされました。また、販売を続けていくうちにマーケティングというものを意識するようになりました。どんなものが売れるのか、どこで売って誰が買うのか、買った人はどう使うのか、ということをかなり真剣に考えるようになりました。「自分の作りたいものがお客様の求めるものとイコールではない」ことはアタマでは分かっていたつもりなのですが、今まではリアルに実感できていなかったのかも知れません。
 通常の業務で私たちが制作する広告やパンフレットには必ずそれを制作する目的があって、掛けたコストに見合う効果がなければ、その仕事は失敗だったということになります。マツヤマワンコインアートプロジェクトに関しても同様で、しかも企画や制作、販売まで自分たちで行うのですから、カードが売れなければ全て自分たちの責任です。絶対売れると思って無理を通して作らせてもらったシリーズが全然売れなくて在庫の山・・・なんてことがあるとメンバーに顔向けできません。リアルにモノを作ってお客様からお金をいただくことの大変さを思い知らされますね。

Q 今後の「マツヤマワンコインアートプロジェクト」の取組についてどのように考えられていますか?
 そろそろポストカード以外にも新しいことにチャレンジしたいと思っています。例えば松山の良さをPRするための小冊子とか。ただ、何か新しいことを考えると、当然また新しい問題が出てきます。販売価格はどうするのか、制作費は販売収益だけで賄えるのか、仮に広告を掲載する場合、広告主の意向をどれくらい誌面に取り入れるのか、それによって作りたいモノが作れなくならないか等。まだまだ問題山積ですが、こういった課題をクリアすることが一番の勉強で、このプロジェクトで活動する一番の醍醐味だと思っています。

Q 藤原様も手掛けられているデザインというジャンルは、商品パッケージのデザイン等のみならず、他産業への波及性も高いと言われ、企業のブランディング等にも活用されていますが、今後、藤原様が携わってみたい仕事はありますか?
 学生の時にCI(コーポレートアイデンティティ)を専攻していたこともあり、CI・ブランディングに携わる仕事もしたいですね。CIとは企業戦略のひとつなのですが、企業というのは創業して何年も経つと、規模、業種、業態の変化に伴いそれまで掲げてきた理念や事業内容、また企業の社会的責任に変化が出てきます。例えば「創業時の社名やロゴマークはこのままでいいのか」、「企業理念をどのように伝えればいいのか」、さらに「経営者、社員、社会の間に出てくる意識のズレをどう修正するのか」等、多くの問題が発生してきます。CI計画とは、そういった問題を解決するために、企業の存在価値を体系的に整理し、改めて定めた理念や行動指針を企業内外で共有する作業そのものなのですが、行わなければならない作業は非常に多岐に渡るため、こういった大きなプロジェクトはやはり組織に属していないと難しいのかな、と思ったりします。
 あと、仕事を始めた時からずっと興味があるのは雑誌のデザインです。雑誌を制作したいという気持ちは以前から大きかったですし、創刊にも何度か関わったこともあります。ある程度ページのある雑誌を定期的に出すということになるとデザインを全て一人で行うことは難しく、アートディレクターが表現の方向性やベーシックなデザインを考え、制作スタッフに細かな制作を進めてもらうのですが、アートディレクターとして一冊の本に関わっていけたらいいですね。
 とにかく、やったことのない仕事をなんでもやりたいと思っています。年齢的にはそろそろ中堅なんて言われますが、まだまだ新しいことにチャレンジしたいですね。

TAKASHI FUJIWARA WORKS
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株式会社アグサス ロゴ・マーク制作
/AG(エージェンシー):株式会社エス・ピー・シー
松山ワンコインアートプロジェクト ポストカード制作
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株式会社NANOぴあ 「ぴあMOOK」 雑誌アートディレクション
/AG(エージェンシー):株式会社エス・ピー・シー
三浦工業株式会社 パンフレット制作
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愛媛大学 「愛U」 広報誌制作
/AG(エージェンシー):セキ株式会社
大洲市 市勢要覧パンフレット制作
/AG(エージェンシー):セキ株式会社