松山市の水問題への取組

更新日:2024年3月18日

松山市の水問題

 本市の水源は、『毎年のように取水制限が行われる石手川ダム』と『少雨が続くと著しく水位が低下する重信川の地下水』しかありません。
 特に、石手川ダムについては、昭和30年代当時、将来のピーク人口を約37万人と予測して建設されたため、現在の50万人を超える都市の構えとしては非常に脆弱です。
 もし、ダム・地下水のどちらか一方に何かあれば、市民生活や産業経済活動だけではなく、医療用水や消火用水の確保の面など、生命や財産を守る都市の機能が著しく低下します。

これまでの取組

面河ダムからの分水(取りやめ)

 松山市は、昭和27年度から7年計画で財政再建に取り組むなど苦しい財政事情でした。また、昭和30年頃、松山市の上水道は、国の指導により未整備であった垣生浄水場と垣生水源地の拡充整備といった大型事業が控えていました。こうしたことから、面河分水の経費負担に耐えられないため、昭和33年5月、上水道としては面河ダム事業に参加しないとの結論に至りました。

山鳥坂ダム中予分水事業(計画からの除外)

 山鳥坂ダム中予分水事業は、ダム建設予定地の旧肱川町の受諾は得られたものの、肱川流域の大洲・喜多郡の市町村や内水面漁業者など関係者の合意が得られず、長い間、塩漬けの状態におかれました。
 そのため、平成13年5月、国は肱川流域を優先するとした基本計画の見直し案を提示しましたが、見直し案は、当初計画より分水量は減らす一方で、負担金は増額という内容でした。肱川流域の市町村は、見直し案を受け入れたものの、松山分水の確約と明確な分水量を示していただけませんでした。
 このように見直し案は、中予地区にとって極めて厳しい内容であったので、中予地区の市町は当初計画での事業実施を求めて国と協議を重ねましたが、平成13年11月、国の判断によって中予分水事業は山鳥坂ダム基本計画から除外されました。

新規水源の確保

 山鳥坂ダム基本計画から中予分水事業が除外されて以来、市民、事業者、市が一体となって渇水に強い都市づくりを目指す「節水型都市づくり条例」を制定し、「最も安価で即効性のある節水を徹底するとともに、水資源の有効利用や保全策などあらゆる対策を講じた上で、それでもなお足らない部分については、新規水源開発で賄う」ことを基本スタンスに、節水型都市づくりを進めてきました。

 まず、水資源対策を短期・中期・長期に区分し、計画的に取り組むこととしました。

<短期的施策>
 平成14年度に近隣市町との間に、渇水時の応急給水を行う相互応援協定を締結しました。

<中期的施策>
 平成11年に松山市水源の森基金を創設し、主に石手川ダム上流地域の水源かん養林の整備を行っています。
 また、下記の表はその他の取組です。

中期的施策の主な取組と成果
施策

取組内容

成果

節水の推進

●啓発活動の推進: 啓発用冊子、TVスポット、ホームページ、水道フェスタ、出前水道教室、街頭キャンペーン、ポスター募集など
●節水機器、雨水タンクに対する助成: バスポンプ、節水型洗濯機、雨水タンクなど
●節水機器、雨水利用施設の設置: 大規模建築物に対する義務付け条例、市有施設での取組

1人1日あたりの平均給水量
358リットル(平成5年度,大渇水の前年)  →  282リットル(令和4年度)

予備水源の確保

●城北地区に深井戸を開発
●重信川流域に浅井戸を確保

平成6年規模の渇水時の給水時間
5時間(平成6年) → 11時間

漏水防止対策の推進(継続)

●石綿セメント管などの更新
●漏水調査の強化
●給水圧コントロールシステムの効率的運用による適正水圧の確保

有収率(漏水の少ない率)91.8%(平成6年度) → 95.9%(令和4年度)

水質管理の強化と安定取水

●かきつばた浄水場と高井神田浄水場に膜ろ過施設を設置(地下水位の低下に伴う濁りが生じても安定取水が可能)

地下水の最低水位(実績)5.49メートル(平成6年7月24日) → 6.24メートル(平成21年6月8日~10日)


【参考】長期的水需給計画(基本計画)の策定
 人口のピークである平成27年度において、平成14年規模の渇水になった場合の不足水量は、1日最大で48,000立方メートルであり、この水量を新たに確保する必要がありました。
 また、平成17年1月の合併(旧北条市及び旧中島町)に伴い、需要予測を見直しましたが、同じ結果となりました。

 これらの施策とともに、市民や事業者の皆さんのご協力によって、市民1人1日あたりの平均給水量が中核市では平成20年度からトップクラスを維持し、全国でも屈指の節水型都市となりました。
 さらに、人口ピーク時に10年に1回規模の渇水が発生した場合に不足する水量は、山鳥坂ダム中予分水事業計画当時、日量84,000立方メートルであったものが、48,000立方メートルにまで大きく縮減することができました。
 しかしながら、それでも足りない水量については、長期的な施策として新規水源開発に取り組んでいくこととしました。

 
 <長期的施策>
 行政だけでなく市議会でも市域内外を問わず現段階で想定できる19の新規水源開発方策(下記PDF)を検討したところ、安定性などの総合的な観点から、不足する水量を確保できる方策は、「黒瀬ダム未利用水からの松山分水」と「海水淡水化」の2つでした。

新規水源確保のための方策比較 
  黒瀬ダム未利用水からの松山分水 海水淡水化

(参考)
中予分水事業(松山市分)

1日最大給水量 48,000立方メートル 48,000立方メートル 84,000立方メートル
事業費 380~420億円 350~400億円 約850億円
水道料金増加率 約10~15% 約40% 約60%
総合評価

黒瀬ダムからの松山分水

 「黒瀬ダム未利用水からの松山分水」と「海水淡水化」の2案のうち、コストに優る「黒瀬ダム未利用水からの松山分水」を、市議会の決議もいただき最優先に取り組むこととなりました。

松山分水に関する意見交換会について

 新規水源の開発は、多くの関係者のご理解やご協力なしに、実現できるものではありません。

 そこで、平成17年12月から平成18年1月にかけて、愛媛県や西条市に対して「県営西条地区工業用水の一部転用」の実現に向けて協力をお願いしました。

 さらに、平成19年1月には、市長と議長が西条市を再び訪問し、改めて本市の水事情と方策の実現に向けた協力をお願いしたところ、水事情に関する「相互理解の場」の設置について合意し、新居浜市を加えた3市で、意見交換会を開催することになりました。
 この意見交換会は、平成19年5月から翌20年3月までの間に6回開催され、3市の水資源の現状及び課題について、正確な情報を共有するとともに、相互理解を深めることができました。
 しかしながら、市民の生活用水を「うちぬき」に代表される地下水で賄う西条市の理解は得られず、平成20年4月以降、協議は行われていませんでした。

「水問題に関する協議会」について

 平成22年9月に愛媛県を事務局とし、西条市・新居浜市・愛媛県と本市の4者で構成する「水問題に関する協議会」が設立されました。
 加茂川及び黒瀬ダムの水の有効利用について、科学的データに基づき、客観的な検証・検討を行うもので、令和元年度まで開催されました。
 平成23年8月には内容的に一区切りついたということから、これまでの内容を周知し、水事情の現状を理解していただくとともに、直接市民の意見を聴き、これを踏まえて今後検討していくことを目的にそれぞれの市の市民に向けた説明会を開催しました。

長期的水需給計画(基本計画)の改訂

 「長期的水需給計画(基本計画)」が、平成27年度で目標年次を迎えたため、これまでの節水型都市づくりの推進に加えて、計画策定からの10年間で顕在化してきた新たな課題への対応などを考慮し、同計画を改訂しました。

「西条と松山の水問題に対する6つの提案」について

 これまでの「水問題に関する協議会」の中で、愛媛県からは、黒瀬ダムには現在の西条市の水問題を解決した上で、使用目的の決まっていない利用可能な水量として日量5万8千立方メートルが示されました。このことから、西条、松山両市が抱える水問題を同時に解決することが可能であることが分かりました。
 これを受け、平成27年8月6日、愛媛県から西条市と本市の水問題を解決するために、6つの提案が示され、本市は平成29年9月22日、提案について回答をしました。

 また、平成31年3月28日、西条市からも愛媛県に対して回答がありました。

 これを受け、令和4年8月4日、西条市と本市は「渇水等の緊急時における相互応援に関する協定」を締結しました。

松山市からの提案

 平成31年4月16日、西条市へ今後の取組について提案を行いました。

「水問題に関する協議会」の廃止について

 西条市は、愛媛県の提示した「西条と松山の水問題に対する6つの提案」は分水につながるものと考えられることから応じられないとし、同様に本市の提案(提案中、「補記」に記載された分水に関する部分)にも応じられないとしました。
 このため、愛媛県は広域調整を終了することとなり、「水問題に関する協議会」の今後の取扱いについて、協議会構成員である、西条市、新居浜市、松山市の意見が求められました。
 本市は会の「休止」を希望しましたが、他の2市は「廃止」を求め、これらの意見や県の提案に対する対応状況等を検討した結果、令和元年6月17日、協議会は廃止となりました。
 詳しくは、外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。愛媛県のホームページ(外部サイト)をご覧ください。

新規水源確保策の検討について

 黒瀬ダムからの分水を最優先で進めることは難しい状況となりましたので、水源確保策について、実現性、安定性、経済性の再検証に加え、環境への影響も考慮し、改めて検証を行いました。
 その結果、前回検討時と状況に変化が見られた方策もありましたが、水道料金への影響など、どの方策も様々な課題がありました。

 そうした中、令和3年3月に設置された、市議会の水資源対策検討特別委員会で約1年をかけて議論され、令和4年2月、「下水処理水の工業用水への再利用」、「海水の淡水化施設の建設」、「雨水利用」及び「下水処理水の農業用水への再利用」の4つの方策が、新規水源確保策として期待できるのではないかなどとする中間報告が行われました。
 松山市では、この中間報告を受け、水道料金への影響も含めて検討を進めており、市民の皆さんの渇水への不安を軽減し、水の安定供給を実現するため、引き続き新規水源の確保に向けて取り組んでいます。

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お問い合わせ

水資源対策課

〒790-8571 愛媛県松山市二番町四丁目7-2 本館5階

電話:089-948-6223

E-mail:mizushigen@city.matsuyama.ehime.jp

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