海産貝類は国内に約8,000種が生息するが、松山市内では死殻も含め574種を確認した。不明種は数多いし、生息していると思える種でも確認できなかったものもある。最近は冬期の海水温の上昇もあり、より南に生息する種が偶発的に見られたりする。それらを考えると600種は優に超える種が確認されると思われる。しかし海岸域の種には厳しい状況には変わりない。自然海岸は失われ、人工海岸がほとんどを占めている。河口干潟は生活排水などの水質汚濁でひどい状況である。そのため岩礫海岸や干潟の貝類は絶滅や絶滅に瀕している。前回準絶滅危惧種としたクマノコガイは北限域の種であったが、北進し普通種に近い状態になった。そのためRDBから外した。また絶滅としたコオロギは要因は不明だが、瀬戸内海全域で復活した。そのため準絶滅危惧とした。
陸産貝類は国内に約900種が生息するが、松山市内では116種を確認した。前回より増えたのはほとんどが市の領域が増えたためである。これらは本来、自然の広葉樹林内を主な生息場所としている。しかし、現在天然林はきわめて少なくなり、社叢林や山地にわずかに残っているだけである。今回特に目立つのは、それらの天然林や広葉樹林は荒れて、乾燥していることである。前回の調査で確認できたが、今回確認できないものが目立つ。生息個体数もかなり減少している。
陸産貝類の中には海浜棲陸貝ともいわれる、海岸の高潮帯のみに生息する貝も含めているが、これらの種にとっての現状はますます厳しくなっている。自然海岸はほとんど失われ、海岸はコンクリートで護岸されている。昔のような石積護岸であればその間隙に生息することもできるが、平坦なコンクリート貼りによって全く生息可能な場所が無くなりつつある。そのために海浜棲陸貝はそのほとんどが掲載種となっている。前回絶滅としたオオウスイロヘソカドガイは旧中島町内での生息が確認され、絶滅危惧Ⅰ類に変更したが、厳しい現状には変わりない。
淡水産の貝は国内に約200種が生息している。松山市内では28種を確認した。しかし、川やため池、そして水田の間の水路などに生息していたこれらの種も、ため池の埋め立てや田圃整備、水路のコンクリート化などによってどんどん生息地が失われている。川は生活排水によって汚染され、生息数は大きく減少している。今回は掲載種は一種増えただけだが、将来にはもっと増えるものと思える。
淡水産の甲殻類は9種が確認できたが、淡水産の貝類と同様の理由で生息状況は悪化している。その中でももっとも危急性が高いものとして、一生を淡水で暮らす純淡水産種のミナミヌマエビをとりあげた。
(執筆者:石川 裕・水野 晃秀)