平成24年11月15日 瀬戸内・松山ツーリズムシンポジウム 基調提案

更新日:2012年12月27日

 本日は、瀬戸内・松山ツーリズムシンポジウムの開催にあたり、このようにたくさんの方々にお集まりいただき、ありがとうございます。
 また、先ほど設立された瀬戸内・松山構想推進会議関係の皆様には、引き続きの会になりますが、今後の地域経済の活性化を占う重要な案件ですので、どうぞ最後までよろしくお願いします。

 さて、2014年、私たちは、三つの大きな節目の年を迎えます。一つ目は、瀬戸内海が日本で初めての国立公園に指定されて80周年。二つ目は、道後温泉本館が建設されて120周年。三つ目は、四国八十八カ所霊場が開かれて1200年。
 本当に偶然に偶然が重なり驚いています。恐らく、全国を見渡しても、これだけの話題性を持つ地域はないと考えていますし、大きなチャンスを与えられたと思っています。ただし、何もしなければ、だだ通り過ぎてしまうだけですし、このようなチャンスは、そうそう巡ってくるものではありません。

 着眼したのは、中世以降、世界からその美しさに高い評価が集まる「瀬戸内海」です。江戸時代に、シーボルトは、「船が向きを変えるたびに美しい島々の眺めが現れ、島や岩の間に見え隠れする本州と四国の海岸の景色は驚くばかり」と著書に書いています。
 また、シルクロードの命名者でもあるドイツの地理学者のリヒトホーフェンは、「広い区域にわたる優美な景色で、これ以上のものは世界の何処にもないであろう。将来、この地方は、世界で最も魅力のある場所の一つとして高い評価を勝ち得、たくさんの人を引き寄せるであろう」と世界中に紹介しています。
 明治初期、ちょうど『坂の上の雲』の主人公たちが、松山の地で高い志を育んでいたころ、近代ツーリズムの祖といわれるトーマス・クックが、旅の途中で日本に来た時に、瀬戸内の島々を見て、「私は、イングランド、スコットランド、スイス、イタリアの、湖という湖のほとんど全てを訪れているが、瀬戸内海はそれらのどれよりも素晴らしく、それらの全部の最も良いところだけをとって集めて一つにしたほど美しい」とその景観を絶賛しています。

 これまでの旅行商品は、行政の縦割りが影響したのでしょうか、中国地方は中国地方、四国地方は四国地方という単位で造成されていました。現に、旅行会社の店頭には、この単位で商品が並び観光客もこの単位で動いています。また、エーゲ海や地中海、そして、美しいと言われるどの湖よりも評価を受けてきた「瀬戸内海」そのものをテーマとした商品はありませんでした。

 私たちが掲げる、観光戦略「瀬戸内・松山」構想が目標とするところ、あるいは、瀬戸内・松山ツーリズムの目指すところは、大きく二つあります。一つは、山陽・四国を周遊する旅行商品の充実と定着です。もう一つは、瀬戸内海への旅にゆっくりと出かけていただくことです。
 瀬戸内海の美しさ、宮島の厳島神社や広島の原爆ドームといった世界遺産、軍港の面影が残る呉の港、そして、日本を代表する道後温泉や、名城・松山城など、単体としてもその資源価値が高いわけですが、複合させることにより、1+1(いちたすいち)が2ではなく、4にも5にもなる、大きな可能性を秘めていると思います。
 
 昨年10月に、「瀬戸内・松山」構想をテーマとして、シンポジウムを開催いたしましたが、宮島・広島・呉・松山を航路で結ぶルートを「瀬戸内海道1号線」と命名させていただき、まずは、このルートを活用した旅行商品の造成と定着へ向けて、私自身、職員とともに、プレゼンテーションや営業活動に取り組んでまいりました。こうした取り組みと、関係者の御尽力が実を結び、御覧のとおり、瀬戸内海道1号線を採用した商品が、次々に造成されてまいりました。
 この背景には、JR四国、JR西日本のお力添えにより、瀬戸内海や、これまでにない松山の魅力を引き出していただきながら、重点送客キャンペーン「瀬戸内・松山キャンペーン」が実現したことが、非常に大きかったと思います。

 このキャンペーンが実施された、今年の4月から6月までの3か月間の数字で申し上げますと、広島・松山間の高速艇、フェリーの利用者数が、昨年の同じ時期に比べて、1万2千人以上増加し、道後温泉の宿泊者数については、2万6千人余り昨年を上回る成果を得ました。
 同時に、「瀬戸内・松山ぐるりんパス」というタイトルの、新幹線、特急、航路といったアクセスに、人気の観光施設や路面電車の乗車券などがセットになった念願の商品が誕生し、この商品を通して、今なお、関西マーケットを中心に、松山の情報や、広島と松山を結ぶ新たなルートが集中的に露出されていることはありがたく、徐々にではありますが、市場が動き始めたと実感しています。この商品は、来年以降も継続いただく方向で、検討が進んでいるとのことですので、朗報を待ちたいと思います。

 一方、全国に目を向けますと、決して楽観視はできず、東京スカイツリーの開業や東京駅のリニューアルオープンに伴い、首都圏に特需が発生し、また、2年後には北陸新幹線の開業が予定される中で、北陸方面への送客に向けた準備が着々と進むなど東日本が注目を集め、私たちの地域を取り巻く観光情勢はますます厳しい局面を迎えるものと考えています。

 そのような中で、本日は、松井広島市長をはじめ、呉市、廿日市市からも、それぞれ中本副市長、堀野副市長もお越しいただいていますが、この3市に加えて、交通キャリア4社にも参画いただき、「瀬戸内・松山ツーリズム推進会議」が発足したことは心強く、午前中の会議でも確認し合いましたが、瀬戸内海道1号線の「ゆめたび」への誘客に、一緒に取り組める環境が整ったと思っています。
 広島の魅力と松山の魅力を瀬戸内海で繋ぐ「ゆめたび」を、全国、そして、世界へ向けて、発信していきたいと思いますので、皆様のお力添えをお願いします。

 また、これは、先ほど、瀬戸内・松山ツーリズム推進会議の一色会長からも紹介がありましたが、官民が連携主体となった新しい広域連携のスタイルとして注目を集めており、国の事業採択を受けるまでに至りました。
 本日は、観光庁から瀧本部長にもお越しいただいておりますので、高い席からではございますが、皆様を代表して、このたびのお礼と、今後のさらなる御支援をお願いいたします。そして、何よりも重要なことは、広島地域と松山・愛媛間の市民交流です。わずか1時間で行き来できます。それぞれの魅力を、タイムリーかつ効果的に発信できれば、交流人口も拡大すると考えています。

 具体的な議論は、このあとのパネルディスカッションで深めていければと思いますが、2014年の80周年へ向けた取り組みについて、現段階でイメージしていることをご紹介します。
 まずはテーマです。瀬戸内海、特に、瀬戸内海道1号線は「青い海」、「緑の島」、「白い砂浜」の3色が楽しめます。また、大きな客船や小さな漁船、そして、港。瀬戸内海の魅力を引き出すテーマはたくさんあります。
 また、現時点では知名度が低い状態にありますが、広島・愛媛の海域には、瀬戸内水軍の物語があり、瀬戸内海道1号線と道後、そして、しまなみ海道を結ぶルートを、一つの物語として演出するテーマとしても最適です。
 具体的な事業の一つ目としては、クルーズ商品。テーマ性のある瀬戸内海クルーズ商品を提案したいと思っています。二つ目には、比較的アクセスの整った島しょ部の資源を磨き、島での滞在型体験メニューなどを提案していきます。
 そして、三つ目に、現在、広島県と愛媛県の共催により、「瀬戸内しま博覧会」が計画され、世界的規模の国際サイクリング大会の開催などへ向けて動き始めていますが、松山市においても、広島市などと連携しながら、瀬戸内海道1号線を軸に、皆様があっと驚くようなことをやってみたいと考えていますので御期待いただきたいと思います。
 なお、道後温泉本館建設120周年、四国八十八カ所霊場開創1200年へ向けた事業展開イメージについては、パネルディスカッションの中でお話しさせていただきます。

 最後になりましたが、瀬戸内海道1号線の市場への定着へ向けての道のりは、厳しく険しい上り坂であります。そして、御参会の皆様の御理解と御支援、地元機運の高まりがなければ、実現はありません。
 「『坂の上の雲』のまち」らしく高い志を持ち、地域一丸となって、構想実現のためにともに歩んでいただきますことを心からお願い申し上げまして、私の基調提案とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

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